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ヤクザと家族 The FamilyのTSのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.9
【時代に淘汰されていく極道】83点
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監督:藤井道人
製作国:日本
ジャンル:極道
収録時間:136分
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 2021年劇場鑑賞6本目。
 ヤクザモノを連続で見てしまった自分。昨日は久々に3本映画館で見ましたが、僅差で今作が一番良かったと思います。1999.2005.2019と、三つの時代を追っていくヤクザ映画。なのですがどこか温かくて考えさせられる映画です。役所広司に続き綾野剛もやはり柄の悪い役がハマりますね。

 金髪19歳の山本賢治は悪友とバイクを乗り回し悪事を働いていた。ある日、行きつけの焼肉屋でヤクザが入り込み、それを追う中国人を山本は追い払うのだが。。

 どれだけ素行が悪い人でも命を救われたら恩返しをするというのが任侠的で良い。柴咲組に命を救われた山本は、最初こそ抵抗していたものの、親分の柴咲と契りをかわし、晴れて組入りするのです。そこから舞台は2005年に飛び、立派に幹部となった山本は組織のために動いていくのです。

 やはりヤクザ映画は熱い。反社勢力ということもあり、時代の流れの中で徐々に隅に追いやられていってる集団。映画界においても、昔と比べると随分影が薄くなったのではと思います。しかし、反社であるから故興味深いやりとりや言動があり、非常に面白く鑑賞することができます。一つ間違えたら命取りのやり取り。命がいくつあっても足りない。しかし、本能的にこれが漢なのかとも思ってしまいます。

 報復のためなら刑務所入りも厭わない。同胞意識の強さこそがヤクザの強みであり誇らしいところでもあると思うのですが、それだけではどうにもならないということを社会は静かに伝えていきます。今作の面白いところは、組同士が衝突しておしまいってわけではなく、ヤクザという勢力が社会の隅に追いやられていく中で、当該者たちはどう変化していくのかというところにあります。そして、一からやり直そうとしたところで牙を剥く、現代の社会問題。このあたりのリンクはうまいなと思ったと同時に、多勢の恐ろしさを感じ取れました。

 2019年の時代のシーンがなんとも暗くて寂しい。ヤクザがフェードアウトしてしまうようなシークエンスです。単なるカタルシスを感じる映画ではなく、『すばらしき世界』と同様、堅気の世界に入り込もうとするならず者たちの心情を窺うことができる良作です。グロシーンは控えめですが、あくまで極道物ということをお忘れずに。
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