撮影とか編集とか技術的な面では褒めたいことがいくらでもあるけど、肝心のストーリーがダメだった。重厚に見せといて実はペラペラ。少年ジャンプって分厚いけど実際読みたい漫画は数ページだけじゃないすか。あんな感じの拍子抜けっぷりでした。この映画から何を受け取りゃいいのか分かんねえよ。
映画や小説では大抵はじめに「主人公の物語上の目的」ってのが提示されるわけですよね。それが達成されるかどうかは物語によりけりだけど、その紆余曲折を楽しむってのが「物語」の基本的な楽しみ方なわけです。でもこの映画ではその提示がない。
それは「主人公は運命に動かされただけだから」とも言えるのかもしれないけど、余りにも主人公の行動全てに意志が感じられない。身寄りが無かったからヤクザになって、ヤクザになったからとりあえず義理と人情を大事にして、義理と人情を大事にしたからこそあんなことになって、後からそれを悔やんで…。それって本当に「不幸な運命」と言えんのかな。彼は運命に抗えなかったんじゃなくて、抗わなかっただけなんじゃないの？
最初に目的が提示されないから、中盤も主人公の背中というより事実関係を追うだけのストーリーになってしまってるし、終盤のパンチも弱い。そんなとこに帰着させたかったの？と呆れてしまった。社会の変化に置いてかれちゃって、俺どうしたらよかったんでしょうって、浦島太郎にでも聞いてみなさいよ。
登場人物の誰のこともあまり愛せなかったな。人はたくさんいたけど、どれも十分に掘り下げられてないから飽くまでも「キャラクター」止まりというか。世界には「キャラクター」なんていないんすよ。あらかじめ決められた性格通りに動く人間なんかいないんすよ。どうぶつの森じゃないんだから。この映画は悲劇の渦中にいる人の視点から描いてるようで描いてないと思う。人間性を浅く描いちゃうとやっぱりそれはポルノになっちゃうんじゃないかな。もっと誠実に描いてほしいよ。
でも本当、撮影と編集と演出は現代邦画界でピカイチだと思った。ところどころ韓国やハリウッドの匂いもしてたし。ただ工業地帯の空撮はカッコいいけどクドすぎて面白かった。何回撮るん。
