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ヤクザと家族 The FamilyのTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.6
1999年、2005年、2019年、3つの年代で主人公の山本がヤクザの道に入るまでと、その後を描く。
同じくマフィアの一生を描いた「グッドフェローズ」とかと同じように虚しい結末を想像してたけど、虚しいを通り越して悲しすぎる、でも男の生き様が滲み出てるラストって感じだった。

1999年、2005年の段階から川山の「俺たちも変わっていかないと」、大迫の「ヤクザを裁くのは法や警察だけじゃない、世の中全体に排除されるようになる」みたいな発言が出てるように、ヤクザそのものの凋落が描かれる。今年観た「すばらしき世界」でも描かれてたテーマ。(どっちの作品にも出てる北村有起哉の振れ幅!笑)
大原が殺された件を警察に預けることになるあたりから、凋落を感じさせる異変が表面化してくる。

14年ぶりに出所した山本の目線で異変、確信って感じでヤクザの凋落を目の当たりにしていく2019年冒頭からのシーンが特に印象に残った。
中村と一緒に迎えに来るのが新顔らしき松田ってのがそもそも異変。一般人と言われても疑わないような迫力の無さが絶妙だった。
そこから入口のくすんだ「柴咲組」の文字、がらんとして寂しい事務所、覇気のない組長と異変が続き、山本の出所祝いで集まった柴咲組「一同」、竹田の「ずいぶん減ったろ」、山本の「じゃあ今どんなシノギしてるんですか」に皆黙る、と凋落が確信に変わっていく。
その後は見えはじめていた希望がどれも打ち砕かれていくような展開で辛い。

ちょっとしたことで厄介者扱いされて、自分の周りの人も巻き込んで不幸にさせて、ヤクザとして落ちぶれてしまった山本だけど翼を守るために犠牲を払うし、不幸にしてしまった細野に言った最後の言葉は「細野、ごめんな」。悲しい結末だけど、山本の男の生き様は落ちぶれてなかったんだなと思った。
社会に適応しようともがいた「すばらしき世界」三上との対比を見ても面白い。

ヤクザを演じた面々の芝居もすごかった。特に大原が殺されたシーンでの綾野剛が印象に残ってる。
竹田はドスが利きすぎてるというかハスキーすぎるというか…ネトフリの日本語字幕をオンにして観た笑