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海の上のピアニスト イタリア完全版のyoko45のネタバレレビュー・内容・結末

4.9

このレビューはネタバレを含みます

イタリア完全版

 とある楽器屋を訪れた男が語る、豪華客船で産まれ捨てられた赤ん坊「ダニー・ブードマン・T.D.(Thanks Danny)レモン・1900」の物語。
 冒頭、甲板にいる乗客の一人が指を差し「America!」と叫ぶと他の乗客も同じ方を向き自由の女神を見つけて歓喜、やがてそびえるような街が見えてくると、これから上陸する期待と感動で甲板は静まり返る、いきなり印象的な光景で幕が上がります。船が大西洋を往復していることもあり、この「America!」の第一声が何回か出てくる場面が面白い。

 船の機関師ダニー・ブートマンが1900を拾い、名付け親となり、1900は船内で育てられ、周りからも愛されます。この赤ん坊から少年時代のパートで彼が「船の子」であることが鮮明になります。ダニーがまた陽気で善い人、でも事故で…水葬の儀式の時に聞こえてきた音楽、ある女性が日本語で「音楽」と呟き1900はその音に惹かれます。
(日本語が入っていたこと覚えていませんでした)

 大嵐の夜、成年した1900が、船酔いで動けないマックス(コーン、トランペット奏者)と出会う場面、ここも印象的。船が揺れるなか平然と歩く1900、フラフラ後を追うマックス、そして二人はピアノと共にダンスホールの中を嵐の揺れに逆らうことなく滑り回る。いったいどうやって撮影したのでしょう、もう最高ですね。
(このマックスが物語を語る男)

 おもに船内の二つの場所でピアノを弾く1900、その即興演奏は上流階級から一般乗客まで多くの人を魅了し楽しませます。1900はその目でとらえたものを旋律にする想像力と技術があるのです。その噂はしだいに広がり、ジャズを発明したというジェリー・ロール・モートンが乗船してきてピアノ決闘が行われます。この決闘、三回戦ですが、モートンは最初から敵意むき出し対決姿勢満々、1900はこれまで対決などとは無縁だから二回戦までは遊んでいるかのよう…と思いきや最後に神の四本の腕が…熱くなるピアノの弦、いやはや痺れますね、最高です(2回目)

 ある時、1900の音楽を世界に送り出そうと、レコード会社が契約と録音にやってきます。1900はなんとなく演奏を始めますが、何気なく眺めた窓、そこにいた美しい女性に見とれてしまい、曲調が切ない愛の旋律「愛を奏でて」に変わります。この時の1900ティムロスの表情が…殿堂入りです、もう最高(3回目)。
 これは僕の曲、1900は契約を破棄して録音した原盤を持ち去ります。

 1900は気になる女性に声をかけることができませんが、かつて出会った乗客で「海の声が聞こえる」話をした男の娘であることに気づきます。やがて彼女が船を降りる時がきても、下船手続きで人々がごったがえすなか、ろくに話もできません。「愛を奏でて」が録音されたレコードも渡すことはできず、1900はレコードを割り、ゴミ箱に捨ててしまうのです。切なすぎて最高(4回目)

 時は経ち、1900はついに船を降りることを決意。陸から海の声を聞くためなのか、彼女に会うためなのか。祝福するマックス、陸の1900を思い浮かべて語るその想像力と表情…素晴らしい友情、最高ですね(5回目)
 そして仲間たちに見送られ、1900は船と陸を繋ぐ階段をゆっくりと降りていきますが、途中で歩みを止め、帽子を放り投げ、船へ戻っていってしまいます。この時の1900の気持ちは最後の方で明らかにされます。

 さらに月日は経ち、マックスは船を降り、1900は船に残り、第二次大戦で老朽化したかつての豪華客船はダイナマイトが仕掛けられ爆破解体されることに。それを知ったマックスは、まだ船内に1900が残っているはずと訴え、船内を探します。
 朽ちた船内にむなしく響く「1900」を呼ぶ声と、船内に持ち込んで流す曲「愛を奏でて」、1900が割って捨てたレコード。この風前のともしび感が何とも言えなくて最高(6回目)

 探すのを諦めて帰ろうとした時、マックスは暗がりに人影、1900を見つけます。一緒に船を降りよう、バンドをやろうと説得を試みるマックス。
 1900はマックスが下船してからも病院船となった船でピアノを引き続けていました。鍵盤の数は決まっていて有限、そこから無限に広がる1900の想像力。かつて船を降りようとした時、陸に降りたとしてその先にあるものが見えなかった、想像できなかった…
 冒頭の1900がよみがえりました。彼は「船の子」。観ている自身もマックスと同様、1900に外の世界を見て欲しかった…でも彼を翻意させることはできません。大西洋を何往復もするなかで何千人、何万人もの目と表情を見続け、有限の鍵盤から無限に生まれる曲と想像力、1900にとってはそれが絶対でした。こういう絶対を見せられると、とてつもない無力感におそわれます…宇宙ですね。最高(7回目)
 
 マックスだけが船を降り、船内の1900の指と表情の画のあと船が大爆発するわけですが、あれっ?と感じたのはこの場面。直接的な描写に少し疑問。

「愛を奏でて」のレコードは、1900が割り、マックスが回収してピアノに隠し、爆破前に助け出されたピアノを引き受けた楽器屋の店主が見つけて修復したもの。
 マックスの話を聞き終えた楽器屋の店主は、彼から買い取ったトランペットをマックスにそのまま返して見送ります。
 1900の記憶と曲は消えません。

(メモ)
だいぶ前に観たので完全版のどの場面をカットして縮小したのか全く分からず
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