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あのこは貴族のnatsumixのネタバレレビュー・内容・結末

あのこは貴族(2021年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

2020年映画締めとしてオンライン試写で。
原作は間に合わんかった。

結論からいうと、2020年の最後に観た映画がこの作品で本当に良かったです。

生まれ育った環境の異なる2人のヒロインと、その周りの人達の目を通して見えてくる、(特に女性を縛るという視点での)社会階層意識や価値観の違いを、一度全部床にばらまいて同じひとつの箱にしまい込んだような作品、主演は門脇麦ちゃんと水原希子ちゃん。

それまでの2人の出演作から考えたら意外なキャスティングだったけど、「ガラスの仮面」の北島マヤと姫川亜弓のようにめちゃくちゃしっくりハマってて、2人の新しい顔がまた見られたのも良かったし、間に立つ石橋静河ちゃん、山下リオちゃん、高良健吾くんの立ち位置も、とてもとても良かった。

最近はネットでもテレビでもラジオでも実生活でも、色んな人のお気持ちが溢れ過ぎていて。

「それって、今そんなに声を大にして言うこと?」
「そのお気持ちって、他人の共感もないとだめ?」
「前は真逆な発言してたけど今回は責任持てる?」
「逆の立場として考えても、その発言できんの?」
「自分の中で考えた言葉として、世に出してる?」
「どれくらい情報収集したの?裏は?ソースは?」

って、いちいち反論したくなるくらいには、個々の感情や主観や解釈や善悪説や正義感や倫理観が自由かつ雑に飛び交ってるなーと感じて引いてしまう事も多くて。勿論、自問自答もしたから自戒の意味も込めて。

でもその人にとってはそれが正義であり正解で、それが当たり前の環境で育って来たんだもんな…そりゃそうなるよな…と悟った今では、あえて反論も論破もせず笑顔で逃げる、という逃げ恥的処世スキルも磨かれつつあって。とても残念なことだけれども。

とはいえやっぱりどうしても地雷踏まれ過ぎて相容れなかったり、一晩寝かせたのにもやもやが収まらないという事もあって、多様性だからってのも勿論わかるんだけど、って忖度した所で、それだけで片付けられない問題もあるよねえ、やっぱり。人間だもの。

同じように、言葉にしないだけで全ての人が抱いた事のある、そういうやり場のない様々な負の思いはきっと昔も今もあって、過去にはそこで永遠に平行線になってしまった残念な結果も沢山あったと思う。

でも「そういう理由で人間関係が分断されてしまう事を無くしたい」という願いがこの作品にはあって、その視点にわたしも救われたし、観た人もきっと救われるんじゃないかと思いました。

自分のすぐ隣にいる人に向かって愛想笑いを浮かべた事のある全ての人へ。

2月26日公開、是非劇場で。
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