りょう

あのこは貴族のりょうのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.2
映画全体の雰囲気も相まって、すごい好きな作品だった。自分自身はここに出てくる華子のような上流階級でもなく、美紀のような苦労したわけでもなく、中の中〜下くらいのレンジで生きてきた者なので、この作品で見たもの全てを客観的に観れたというか、中立で観れた気がする。

「貴族」の人たちの生活の中にいれば、世間とのズレや違和感は意識されずに、その貴族階級を維持するためのルールや文化、コミュニティの中での人生を歩むことになる。階層を超えての交流はほぼなく、私自身もそういった方々との交流は全く無かったし、これからもありそうもない。

逆に美紀のような人はまだ友達の友達くらいの範囲に居そうだから理解しやすいし、馴染みやすい。

どちらの方が人生として楽しいのかは価値観次第だけど、お金が潤沢でも敷かれたレールを踏み外さないように生きる人生か、基本的には全て自己責任でリスクもチャンスもある人生か。

華子の所作や持ち物なんかに貴族を感じるけど、特にジャムの瓶を人差し指で掬いながら舐めるシーン、気心知れた伯父さんとリラックスして話しているのを垣間見れてほっこりする。

場面場面での外の景色の見え方や、最後の逸子の演奏会での幸一郎と華子の位置関係なんかもその階層が意識されていて面白い。

幸一郎も敷かれたレールを踏み外さない人生に嫌気差す部分もあって美紀との関係が心地よかったんだろうな。でも逸子が美紀と華子を引き合わせるってちょっと逸子やりすぎじゃない?笑

門脇麦はあまり沢山の作品観れていないですが、直近で観たのが浅草キッドだったので、華子みたいな上品な役もできて振り幅すごいなって感じた。水原希子は正直敬遠しがちだったのですが、美紀の役はすごい良かったし、自然に受け入れられた。高良健吾は、上流階級でありながら少し頼りなさだとか弱さみたいな部分を醸し出しているのがさすがです。

女性の人生にフォーカスを当てた作品だけど、男性から見ても、自分の人生に主体性持って生きられているか、そう自問自答する機会をもらえる素晴らしい映画でした。
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