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スザンヌ、16歳のSPNminacoのレビュー・感想・評価

スザンヌ、16歳(2020年製作の映画)
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フランスでまた少女の通過儀礼映画か…とありきたりなものを思わせるけど、ちょくちょく笑わせもして意外と面白かった。スザンヌがとにかく真面目な子なのが良い。
同級生には馴染めずぼんやり物思いにふけるスザンヌだが、慣れないパーティに出かけてみたり、自分なりに変化のきっかけを掴もうと努力してるのが真面目。同じく物憂げな大人の男に惹かれると、真面目だからせっせとプチ・ストーカー化して出会いを待つ。これまた真面目に慣れないお洒落したり、やたらニヤニヤしちゃったりがちょっと笑えるんだよねスザンヌ。真面目だからこそ不器用な子どもらしくて。ていうか、自分もこんなだったし。
35歳の舞台俳優とアウトなのかセーフなのか微妙な恋は、ダンスを通して物語るのがまた面白い。パーティでは踊れなかったのに恋のときめきを爆発させるスザンヌのダンス、カフェでシンクロする振り付け、ママ相手に予行練習したチークダンス。
そしてグレナデン・ソーダ、財布、髪のゴム、スクーター、ボリス・ヴィアンの本、カフェ、セーターと象徴的に使う赤。それはスザンヌが求める刺激、背伸びした恋。でも彼が同じ赤いソーダを飲んでも、2人は立ってる舞台が違う。芝居が幕を下ろし客電がつくように、突然ふっと我に返る。そういうものだ。
スザンヌは内緒で一人で冒険に出かけても、毎回必ず親(特にパパ)の所に帰ってくる。そこがとても良かった。やっぱ真面目な子。だから面白い。別に除け者にするでもない同級生との距離感も絶妙で、世界史の授業は笑っちゃったよ。
長いチークダンスは『ラ・ブーム』、スザンヌ・ランドンは『なまいきシャルロット』のシャルロット・ゲンズブールを思わせて、エンディング曲の歌もそうだし、80年代の同系統映画を意識してるはず。スマホとか出てこない、時代設定を曖昧にしてるのもその狙いだろう。って、監督脚本主演があのヴァンサン・ランドンの娘で20歳なのか…。スタンダードにとても素直でしかも短い、好ましい映画だった。
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