ひば

アンモナイトの目覚めのひばのレビュー・感想・評価

アンモナイトの目覚め(2020年製作の映画)
4.5
美しい服、楽しいお喋り、艶やかな人口照明に傷付く女性。個々の有り様を写す社会は難解でアンバランスで綺麗なんかじゃない。文化資本と階層。青白い女性達が個人では及ばない荒涼な海辺で互いを求める荒々しさこそ今求める女性像に合致するものでした。見てて、自分も同じ波に乗っているようで、波自体は荒いんだけど一体感に揉まれてなんだかすごく心地良かった。
マリーキュリーのようですね。成果が性別や容姿に紐付けられることでさえまだ良かれとされた時代の話なのかもしれません。社会の構成人でありながら見えているけどちゃんと見られることはなく重要視されない、男の何倍も能力や従順さを示さなければならない。除け者同士が協調することを外部の目で見れば"美しい"というのはグロテスク過ぎます。女性同士の映画に容姿の美を中心とした美に突出した方向でまとめられると失望するので少し心配ではありましたが、後から知ったんですが『ゴッズオウンカントリー』の監督であぁ~と納得。信頼できる監督ですね。BBC配給だったんだけど確かにBBCらしい雰囲気だった。
化石のこと好きなのに化石までホモソーシャルのモノになっていた…私の中では化石が発掘されると同時に永久凍土(イギリスには多分ないけど)は溶け世界に害物質という閉ざされていた疲労と憎悪と欲が撒き散らされるのだ、と女性の社会構造を重ねるものがあります。物事の本質を特定の属性のみが見定めると人は全体で後々脅威に晒される可能性があるとそう思うのです。ポツポツと女性の映画が出てくる近年、自分の価値は自分で決めるし自分にふさわしい相手も場所も自分で決めたい、個々の有り様を受容する社会はもっと難解でアンバランスで綺麗なんかじゃないと、カオス的物語をどうも自分は時代の流れと共に求めている気がします。裕福さは縦の長さなんだなぁと建物が雄弁でした


追記:性的指向が明らかになっていない人物に恋愛記号付けをしたのはちょっと
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