ベビーパウダー山崎

ラヴ・アフェアズのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

ラヴ・アフェアズ(2020年製作の映画)
4.0
男と女がお互いの恋愛話を聞かせて、その過去の体験がひとつの物語として描かれ、それが直線としての構成ではなく、男の話が中断されれば次は女の話になり、また女の体験が物語として膨らんでいく。誰もが狡くてだらしなく、心情を赤裸々にモノローグの多用、劇的な場面にはクラシック、小説家の男と映画編集の女。つまり一見ロメール風のベタな恋愛劇と思わせて、これは「ホン・サンス」的な仕掛けの映画。エマニュエル・ムレ、お前もホン・サンス大好きだろ。分かるよ。
肉体が触れればブレッソンばりに部位を切り取るように映す。愛を語るにも強い痛みは当然平等に描かれ、嫉妬というよりいつ溢れ出してもおかしくない悪意が底に流れているこの感じは『令嬢ジョンキエール』でも試みていたが、とても現代的なアプローチ。見え見えではなく、薄っすらだけど「執着した悪意」ってのがポイントで、これは濱口竜介的と言っても良い。
中心の女性の視線、その相手を探す画からはじまって、離れ離れになってしまった彼を見つめる視線で綺麗に閉じる。エマニュエル・ムレ、映画をよく知っている作家。ロメールの道すじを辿りホン・サンスと濱口竜介のハイブリッド、見ておいて損はないと思う。面白いよ。