このレビューはネタバレを含みます
これは…
ものすごーくざっくりとした内容は、スーパーメンヘラうさぎちゃんボーイとマッチョでクールで自由な兄ちゃんのひと夏の恋と喪失を乗り越える物語です。
でもそれだけじゃないというか、
すごく変わった映画でした。
不気味といってもいいかもしれない。
時代設定や同性の恋愛という意味で「君の名前で僕を呼んで」を想起させられるだろうかと思っていたけど、杞憂に終わりました。
どちらもディスコで踊るし、ツーリングもするし、イチャイチャもあるんだけど、全くの別物。こちらはどことなく奇妙な雰囲気がある。
なんでかな、と考えるとこの映画にはいつも「死」が付き纏っている。
主人公アレックスは「死」(という概念)に惹かれている。相手のダヴィドは父親を亡くしている。さらに、初めて夜を過ごした翌朝、ダヴィドはアレックスに誓いを立てさせる。
「自分が死んだら墓の前で踊ってくれ」
そして、結果的にアレックスはダヴィドを死に追いやってしまう。
人間関係どんな形でも、この人はこういう人だろうと思い込んで、勝手に期待したり理想を押し付けたり、なんてことがある。
アレックスも理想のダヴィドに恋をしてしまい、現実とのずれが生じていると気づいた時にはもう手遅れになってしまった。喧嘩別れしたまま、アレックスの短い初恋が終わる。
この一連の出来事がまるで、理想からかけ離れてしまった恋人を、魅了されている「死」の世界へはめ込んだようにも見えた。もしくはダヴィド自ら望んでその世界に。
そして、儀式のような墓場でのダンスシーン。弔いとか約束というより、取り憑かれたようにダンスという目的を果たそうとする姿はダヴィドからの呪いのようだった。