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アナザーラウンドのarchのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.0
トマス・ヴェンダーベアといえば閉鎖的なコミュニティにおける負の連鎖を繊細な心理描写で描き上げた『偽りなき者』という大傑作を生み出した監督であり、またもマッツとのタッグという事で本作も非常に楽しみな作品であった。

血中アルコール濃度0.05%を維持すれば人生は最高なものになるという仮説を元に、冴えない教師4人が仮説の検証を行っていくという物語であるが、安易な飲酒推進映画にも、アンチ飲酒映画にもなっていないところが良い。

人間と酒は多分遥か以前から結びつき、今後とも人類と切り離すことの出来ないものである。その影響は時には人生を破滅させ、時には酒の勢いや飲みニケーションが状況を好転させたかもしれない。そんな酒と人間の切っても切り離せない関係を、酸いも甘いもある人生の潤滑剤(スベるという意味においても)として描いた本作は、非常に現実に忠実なお酒との付き合い方を描いているように思った。

そして何よりもマッツの演技が素晴らしい。無言のマッツの引き込まれるような顔も良いし、酔いつぶれて砕けたマッツ素晴らしい。そして何より最後のダンスはマッツのベストアクトという他ない。あのダンスはトミーへの手向けであり、今作に最もふさわしい人生賛歌の形でもあり…。

人は何かに寄りかかって生きている、そしてとてつもなく馬鹿をしたい時も来る。完璧さや正しさとは無縁で、人生の不完全さを讃え、ただ今のこの瞬間を愛そうとする、そんな映画でした。
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