しゅんまつもと

人数の町のしゅんまつもとのレビュー・感想・評価

人数の町(2020年製作の映画)
3.7
直近ではクリストファー・ノーランの『TENET』、エミー賞を総ナメしたHBOドラマ『ウォッチメン』でも描かれた、恐らく2020年のカルチャーテーマのひとつである"自由意志と決定論"を扱った映画がまさかこんなところで観れると思わず、かなり驚いた。少なくとも日本で作られた映画では観たことがない。

映画後半(具体的には町からの脱出から)での、理解し難い主人公の行動とその後の唐突な展開を見たとき、自分はなんかすごい安心したんですよね。
すべてが理にかなっていて思考を必要としない町が怖すぎたからこそ、あの訳の分からない告白とキスや、行き当たりばったりの逃避行は物語の筋はたしかに通らないけれど、言語の外側の意思があるように感じたからだと思う。やっと意味わかんない行動が見れたー。みたいな安心。

明らかに作り手もそれには自覚的だろうし、単なるショートショート的なプロットの物語を脱しようとする気概が感じられた。
もちろん普通の映画であるなら感情の揺れやその積み重ねが行動に繋がるのだろうけど、この映画というかあの町には明らかにそのルールが適用されないのだから行動原理に説明がないのは至極当たり前だと思う。

ただし、だからこそラストはもっと突き放してもよかったのでは。家に置かれたあの機械を映して終わりでもよかった。あそこまで明確に描いちゃうとちょっと映画が矮小化してしまう感じもする。