よねっきー

スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバースのよねっきーのレビュー・感想・評価

4.8
映像も脚本も良い舵の切り方してんなあ! と感心する続編。前作より明確にパワーアップしてると思います。『スパイダーマン:スパイダーバース』は間違いなく映画史に残る傑作だけど、アレに勢いで満点つけたりしなかった4年前のおれ、賢いな。ありがとう。

昔話のごとく幾度も語り直されてきた「スパイダーマン」という物語。その語り直しの歴史が、今作でついに次のフェーズに入ったような気がする。マルチバースは、自分の人生をメタ的に見つめる。メタだからこそ本質に辿り着いてる。

スパイダーマンにとっての最大の敵は「悪しき二項対立」である。サム・ライミ版のスパイダーマンでグリーンゴブリンが「恋人を救うか、子どもを救うか」という二択を迫ったように、今回はスパイダーマン(自分自身)が「愛する人を救うか、世界を救うか」という二択を提示してくる。幾度にも重なる語り直しが築き上げてきた「愛する人の喪失」という《スパイダーマン性》は、逃れられない運命なのだろうか。この展開にはめちゃくちゃグッときた。構造主義的な物語の運命に晒される架空の存在が、自分自身(無数のスパイダーマンたち)の築き上げてきた物語を武器に、物語へと立ち向かう。スパイダーマンだからこそ危機に晒され、スパイダーマンだからこそそれを斥けるのだ。

映像の気合いの入りようはもう尋常じゃない! 前作よりも手数が圧倒的に増えてたように感じる。バースごとの世界観の違いを「画風」で表現しちゃうヤバさ。グウェンの世界のバンド・デシネ風な色彩感覚が好き。

一作目と三作目の繋ぎ的な立ち位置にあたる二作目だからこそ、物語が展開しきらないような印象は少し受けるんだが、その物語では表現しきれない興奮を、目まぐるしい映像が常に補っていく。映画は、文章やファスト動画で代替可能な「情報/ストーリー」なんかではなく、何にも代え難い「体験」なのだと証明してくれてるようで、またグッときた。映画作家の気迫を確かに受け取りました。映像表現はまたネクストレベルに進むかもしれない。そして、その方向性は実は『ロジャーラビット』の頃から提示されてたりして。

まあ、何にせよ三作目に期待だ。きっと期待に応えてくれるでしょう。全幅の信頼をおける製作陣。
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