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夏への扉 ―キミのいる未来へ―のokadunkのレビュー・感想・評価

3.1
 元々の原作はロバート・A・ハインラインというSF作家として大御所中の大御所の作品。山下達郎が最も好きな作品として挙げている。そして、まったく同じタイトルの楽曲も作成している。歌詞の中にピートという名前もあり、実に可愛らしい曲になっている。
 私も過去に原作を読んだことがあるはずだが、ほとんど覚えていなかった。この日本のリメイクで内容を思い出していった。大筋のプロットは、会社の同僚に騙されて冷凍睡眠させられる。タイムマシンで過去に戻る。過去の同僚の発明を取り壊す。冷凍睡眠して未来に戻る。という話だ。
 とてもロマンティックな話で、日本での人気も高い。原作の舞台は1970年で、未来は2000年なのだが、人類の進化の速度が停滞していることに思い知らされる。1967年に月に飛んだのに、それ以降一度も月への有人飛行をしていないのだから、停滞しているのだろう。
 この日本版は原作のプロットを忠実に再現している。この作品の素敵なところは、まず猫のピート。ずっと「夏に続く扉」を探している。このピートの行動こそが、この作品の全てだ。夏への扉をずっと探し続けるのが人生だ。あとは、璃子が冷凍睡眠して高倉宗一郎を追いかけるところ。そこは日本版では原作と違い、高倉宗一郎は璃子に冷凍睡眠して会いに来いとは言わない。何も言われていないのに追いかける璃子がいい。とても日本的なアレンジだと思う。こういう過去の名作の邦画はアイドルファン向けのファンアート作品になりがちなのだが、ちゃんと作品として成立しているので見ていて楽しめた。
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