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ねじの回転のYuki2Invyのレビュー・感想・評価

ねじの回転(2009年製作の映画)
3.4
これもまた、非常にハイ・クオリティな原作小説と、そしてそれにごく忠実な先行の映像化作品(1961年の『回転』)が既に存在しているというヤツですね。で、今作の発表当時も相当なる賛否両論を巻き起こした…とのコトで、その賛と否が定め難い…というコト自体は(原作既読+1961年版も鑑賞済みな)私自身もほぼ同意見にはなるのです。

具体的にその「否」となる要素としては、まずとにかくには今作、原作&1961年版とは根本的に「全く違う話」になってしまってる…というコトに尽きます。原作は、確かに怪談の形式を採った文学作品ではあるのですが、真なるそのコンセプト=作品が真に描き出そうとするモノとゆーのは、屋敷で何が起こっているのかが最後まで判然としない⇒誰が正しいのか・(何より)主人公=筆者の抱いている考え・疑念が正当なものなのかが分からない…という「葛藤」なのですよね(ジャンルとしては心理的サスペンスなのです)。それが、今作ではその諸々の事象=屋敷に幽霊が居て・子供たちが彼らに魅入られて居て・そして最後には…といった辺りは(映像的にも展開的にも)全て「事実」として描かれていて、むしろそれを事実として映像的に見せ付けてゆくコトで成立しているホラー、と捉えるべき作品に思われるのですね⇒その意味では、ホラーとしてはごくシンプルな「悪魔憑き」系の作品になってしまっても居ます。

ただし、個人的にはまた、この映像化における「意味的改変」というコト自体は、そこまで条件反射的に「否」とするべきモノではないかな…とも思うのですね。原作が長大な心理サスペンスとして成立しているのは、やはりそれが「文学」だからであって、かつその優秀なる1961年版とて確かに原作を(原作のまま心理サスペンスとして)存外に巧みに映像化することに少なくとも部分的には成功していた…と思うものの、それでも(また個人的には)例え1961年版でも原作には決して「敵ってはいない」と思ってるのですね。やはり、当初から幽霊もの・怪談だと思ってその映像を観ていってしまうと、どうしたって(それがサスペンスであるというコト自体が)やや分かり難い・入って来辛いと感じるのです(⇒でモヤモヤしながら観てるうちに話自体は小説と比べたら遥かにサックリ終わっちゃうし…)。このコンテンツの(再)映像化としてはつい最近にも『ザ・ターニング』なんて映画がありましたが、この2作品は(今作に関しては前述どおり)フツーに比較的分り易いホラーとして=クイントやジェスルの幽霊を映像的な恐怖の対象として仕上げられています。そしてそれは正攻法の映像化が(シンプルに)難易度高い&かつその面で「ワリに合わない」というコトなのかな、とも思うのですよね。更に、その意味では今作はその『ザ・ターニング』に比べれば、諸々の改変のやり方自体も(またシンプルに)決して悪い方ではなかった⇒それ故に原作のゴシック・ホラーとしての質感は損なわれずに済んだ、とも思ってるのですね(⇒『ザ・ターニング』は、かなり妙ちきりんな改変によってごく支離滅裂な凡作になってもーてたと思いますので…)。個人的な「賛」としての結論は、今作は(それでも)ワリと原作準拠+しかしホラーに改変したコトで分り易くなってて原作の雰囲気を(お手軽に)感じ取る分には十分に有用、というコトになりますかね。

ただですね、じゃあ「否」の方は何なんだってゆーと、であるならばホラーとして評価するよ!となると超・シンプルに全然(全っ然)怖くないんですよ今作………お化けが(映像的に)出て来まくるとはゆーて今どきレベルで派手なコトは何もやってないし+でもそれでも子供ホラーという観点からはもうちょっと幾らでもやり様はあったと思うのですがそこにはそもそもモチベーション自体が全然感じられないし…という始末でもあるのですね。。子役は二人とも超・可愛かったので、まずそこが至極に残念なのです。。

もう一点だけ、これも発表当時かなり物議を醸したとのコトなのですが、今作ってまた妙に=無駄にエロっちいのですよね。確かに原作にも、若い女性である主人公が(これも若い金持ちの男性である)雇い主を少しだけ意識するような描写が在るには在ったと思うのです、がそれでもそれを何でこんなに粒立てる必要があったのか?とは思いますよね(⇒また結構ハッキリとそーいう物理的映像的なシーンも入って来まくるのだし)。何でこんなこと言うかとゆーと個人的に、子供ホラーに性的描写は絶対に相性悪いと信じて已まないからなのですよ(かつ「ゴシック」であるワケだってねーのだし)。その点などもかなり疑問でしかなかった…ので、最終結論としては差し引きしてこの点数としております。以上。
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