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樹海村のrollinのレビュー・感想・評価

樹海村(2021年製作の映画)
4.2
じゅじゅさんぽ

両面宿儺と戌神ころねもケジメをつけるレベルのYUBI YUBI案件!富士の青木ヶ原樹海にまつわる妄想と洒落怖殿堂ネタ『コトリバコ』を下世話MIXして案の定訳分からんことになってる清水崇のVILLAGEシリーズ第二弾!!

シリーズ前作となる『犬鳴村』は散らかりまくってて評価の対象にすらならなかったんだけど、そんな反省点を踏まえてか、今作はそれなりにブラッシュアップされていて正直中々おもしぇかったです。

まず特筆すべきはキャスティングの良さですね。
主人公・響を演じる山田杏奈のちょっとルーズだけどニュートラルな存在感は空虚な物語の容れ物として相性抜群だし、失礼を承知で言うとこの娘めっちゃエロない?生活感丸出しの普段着・寝巻きを執拗にフィーチャーしたことで増長される普段使いのエロスがとにかくごちそうさまです。作品全体にエロ成分を配置している点はホラーとしても効果的かつ好印象でした。

犬鳴村に続き、地獄のYouTuberや脳味噌スポンジのへらへらモブが出て来るんですけど、そんなスカスカな存在を國村・コクソン・隼や高橋和也といったベテランのキャスト陣が上手くサンドイッチすることで作品のクオリティがキープされています。特に印象的なのは安達祐実の女優としての確かな仕上がりっぷり。

あと地味に良かったのは、撮影や音楽、さらには全犬鳴村ビジターが椅子から滑り落ちたと言われているくそドローン撮影技術の目覚ましい向上ですね。樹海の圧倒的な景観はナチュラルパワーとして、お寺で高橋和也がハコを祓うシーンや主人公宅など、長回しを効果的に使いながらしっかり構図をキメていくのは気持ち良かったです。

そして肝心の内容ですけど、これはもうまんま犬鳴村の舞台を樹海周辺に変えただけ。ただ上述の通り、今作では絶賛呪術廻戦中の主人公パーティとは一枚フィルターを隔てた時空ドリフターズである國村隼&山下リオの“樹海警察”という存在がおり、樹海村伝承の語り手、または物語全体の冷静な傍観者として上手くバランスが測られています。
さらには主人公一家と樹海にまつわる因果や時空のねじれもシンプルで分かりやすいものになっており、その分姉妹の感情や物語の哀しさに集中出来る配分となっていました。
ホラー演出に関しては大体展開の予想が出来るくらい意識的でベタなものが多いんだけど、個人的に一番キテたのは黒沢あすか演じる寺女房が病院で魅せた、病室に引きこもって曇り窓越しから覗いてるあの異様な演出です。あれはいいぞ。樹人に関しても世にも奇妙な物語の『峠の茶屋』味があって好物でした。

さてここからは不満点。
まずこれは全樹海村ビジターが思うところでしょう「樹海×コトリバコって欲張りすぎじゃね?」問題です。もうそのまんま。というか今作はほぼコトリバコがメイントピックで、樹海村はイベントスペースでしかありません。そしてコトリバコと樹海村との関連性もふにゃふにゃで、要は呪いの主体がはっきりしていないので、只々神輿のない祭りを観させられているような気分でした。
古の2ちゃんネタや青木ヶ原樹海といった権利の所在が曖昧かつ既に巨大に成長しきった特級呪物を扱うのは予算的にも助かるし利用しない手がないのは理解出来るけど、もう少し物語的な整合性というか、やるならガチでイクとこまでイカせて欲しい。終盤のギレルモ・デル・トロ〜ダークソウルな超展開は別に嫌いやないで。

あとこれはもう清水崇の苦手分野だと無理矢理納得するしかないんだけど、犬鳴村に引き続きマッピング能力がなさすぎ。樹海内部の位置関係とか探索パートに興味は無いにしても、もう少しロケーションや各スポットの位置関係を丁寧に考証しないとめちゃくちゃ安っぽい作品になってまうし、せっかくこんだけ欲張ったのにもったいないで。

最後に不満を述べましたが、犬鳴村とは雲泥の差がある好印象&意欲的なホラー?でした。清水崇はまだ舞える!
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