ヒロイン紗希の実在感たるや。
33分という短編映画なので物語そのものは本当に単純なのだけれど、ストーリーテリングではなく人間を描写することだけに集中した作品作りが非常に良い結果を生んでいる。
特筆すべきは女優清瀬やえこ女史。うまい。素晴らしい女優だ。焦点の定まらない視線や指の先まで神経の行き届いた演技は賞賛に値する。
また演出では俳優の翔が自販機前で小銭を拾うカットが素晴らしい。見てくれだけが取り柄のような男が、小銭を必死に拾い、汚いケツまで見せている様はそれだけで人物描写として余りある情報量だ。良い。
しかし作品としてノイジーに感じたのは取り調べをしている男女。あれ警察官っていう設定なの?そんな人はいないんじゃない?と思ってしまった。限られた上映時間の中で複数回登場するからなおさらだ。あれはもっとうまく処理できたのではないだろうか。
代替品で埋めようとすると、穴はいつまでも塞がらないよなと思いながら余韻に浸っている。おすすめです。