イルーナ

ユッカフラッツの野獣のイルーナのレビュー・感想・評価

ユッカフラッツの野獣(1961年製作の映画)
1.1
「これを見ると『プラン9』が『十戒』に見える」

『エド・ウッドとサイテー映画の世界』にて紹介されていた作品ですが、その紹介文がこれ。
史上最低の映画監督の最低傑作がスペクタクル超大作に見えるレベル。もうヤバさのレベルがハンパないですね。
しかもエドの作品常連のトー・ジョンソンまで出演してるじゃありませんか。
そのためずっと頭の片隅に引っかかっていた作品ですが、まさかアマプラのレンタルにあるとは。いい時代というか、何というか。
で、観てみると……

こ れ は ひ ど い

全編ナレーションだけで話が進行し、まともなセリフがろくにないので、ほとんどサイレント映画と変わりない。妙に背伸びしたような言い回しがエドの作品を彷彿とさせるものがあって痛々しい。
しかも字幕が、Google翻訳並みの直訳だったり、いきなりオカマ口調になる男性キャラなど口調がてんでバラバラという壊滅ぶり。

他にも、

・なぜわざわざ核実験場なんかで、アメリカの高官と会談しようとしたのか、さっぱりわからない
・生きるか死ぬかのやり取りのはずが、まるでやる気のない銃撃戦やカーチェイス
・ちんたらと逃げていくトー
・そもそもトー自体、亡命してきた尊敬される科学者に見えない
・その後彼は放射能の影響で理性なきモンスター化!と言っても、圧倒的パワーで破壊しまくるとか一切なく、首絞め程度というショボさ。しかも杖ついて歩いているものだから、ボケて徘徊してるおじいちゃんにしか見えない
・その後パトロール隊、巻き込まれる観光客の話が絡んでくるが、登場人物全員ひたすら砂漠でうろうろするだけなので、一体何がどうなってるのかわからなくなってくる。当然話のテンポも最悪
・何発撃たれてもピンピンして逃げ回るお父さん

確かにこれは最低映画ですわ……ネタにできるような部分も一切ないのが余計にキツいです。
狙ってないのにネタまみれという『プラン9』は本当に奇跡的な作品だったんだなぁ。

とはいえ一応マシなシーンもないわけではありません。
まず冒頭の『サイコ』を思わせる殺害シーン。これ自体後から付け足されたものらしいですが、なぜ最初からそれができなかったのか……
時系列を考えたらトーが被爆した後のはずですが、ずーっと砂漠をうろついてるだけなので思いっきり浮いています。
後はラスト、瀕死のトーにウサギが寄り添う所。たまたま野ウサギが映り込んだところにトーがアドリブで入れたものらしい。
これでちょっとはエモく……なれたのかも?

余談
観光客の母親と子供、監督の家族だそうです。ということはちょっと手のかかったホームムービーということに……しかも撮影前に離婚していたというのがまた。
おまけにプロデューサーがエド・ウッドの知り合いだったそうで、最低映画になるべくしてなったというべきか。
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