イルーナ

劇場版 アーヤと魔女のイルーナのレビュー・感想・評価

劇場版 アーヤと魔女(2020年製作の映画)
1.5
ジブリ初のフルCG作品。
いつものあの絵に慣れた身からすれば「え?」という感じですが、監督は宮崎吾郎……
よくあれだけ酷評されてるのに映画の監督させてもらえるなという感じですが、本作は『コクリコ坂から』でちょっと良くなってきたかな?と思っていたら『ゲド戦記』に逆戻りしてしまったかのような作品でした。

CGという点ですが、セルルック調でなくディズニーやピクサー的な3D。
一日の長があるそれらと比べると質感が固くて、どうしても見劣りしてしまう。
この絵の時点で観るのを避けた人も結構いたんじゃないでしょうか。
さらに予告も、過去のジブリの名作のシーンを流し、最後には「映画館でジブリを見よう」という、虎の威を借りた狐状態。

冒頭、アーヤの母は何者かに追われてカーチェイスを繰り広げるのですが、ミミズの群れをぶつけただけで孤児院を訪ねる場面に切り替わってしまう。
ここ、親父だったらこれでもかと盛り上げる所なのに!というかカーチェイスシーンなんて普通一番の見せ場になる所なんですが?!
相変わらずまともなアクション演出ができないゴロー。もうこの時点で暗雲が漂っています。
このアーヤの母は12人の魔女に追われているため孤児院にわが子を預けに行ったのですが、物語のカギを握るはずの12人の魔女は何と一人も出てこない!
普通の作品ならガッツリと絡んで盛り上げてくるはずなのに。
孤児院で幽霊ごっこしてたのもただのイタズラで、別にハロウィンみたいなイベントがあったわけでないというのも雑です。

アーヤは大人たちに上手いこと取り入って、自分の思うがままにさせるというオーソドックスな少女像とは異なったキャラクター。
このキャラクター像に加え、ワガママの通じない魔女と怪人の里親に引き取られたことで駆け引きを展開する……というストーリーは面白そうなのですが、とにかく盛り上がりそうで盛り上がらない。
魔法薬作りのためにこき使われて反撃を目論む割にはなかなか成果が出ないし、グダグダやり合っている内に、実は母と里親二人は昔バンドやってたことが明らかになってアーヤと彼らの仲は急速に改善に向かう。
それまでずーっと同じような展開を繰り広げてたのは何だったんだ。
魔法を無力化する薬も、作る際に呪文間違えたかも……となったらその後トラブルが起きそうなものなのに結局起きないし、効果が発現するのも存在すら忘れた頃。ぶっちゃけわざわざ時間かけて作った意味が殆どない。
ペース配分がおかしいなと思っていたら、季節は飛んであっという間にクリスマスに。
新たな環境でも里親二人を手玉に取ってすっかり適応したアーヤの元に、突然母親がやって来る。
「メリークリスマス。“操る”」
で、おしまい。

前述の12人の魔女、バンド設定、母親は何者なのか、伏線は一切丸投げして打ち切りエンド。
そりゃ酷評されるわな……という感じです。一つの作品として成立してない。
しかもバンド設定は原作に存在しなかったという。道理でキービジュアルで描かれていた割に取ってつけたような扱いだったわけだ。アーヤもバンド仲間に入れたれよ……
そもそも原作自体が未完で終わっており、かなり無理のある題材だったわけですが、それでも自分なりに結末をつける気概くらい見せてくれよ!って感じです。
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