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名も無い日のradioradio526のレビュー・感想・評価

名も無い日(2020年製作の映画)
4.1
「なぁ…命日はいつになるんだ?」

「名も無い日」鑑賞。

名古屋市熱田区で生まれ育った達也・章人・隆史の3兄弟。自由奔放な兄、達也はニューヨークで写真家として多忙な日を過ごしていたが、突然弟・章人の訃報を受けて地元に帰ってきた。自ら破滅へと向かう選択をした章人に何があったのか?
カメラを手にして地元を巡る達也は家族や周りの人々の足跡を辿り、思いに触れる…そしていつものようにシャッターを切ろうとするが…。

長男の達也を永瀬正敏、次男の章人をオダギリジョー、三男の隆史を金子ノブアキが演じる…もうこのキャストだけで観ない選択肢は無い。
永瀬正敏は派手な作風には合わないけど本当の意味で日本を代表する男優だと思う。
こういったどこかしら含みを持たせる作品には圧倒的な存在感を見せてくれる。
そしてオダギリジョーとの絡みは静かで青白い火花が見えた。世代こそ違うが、俳優として近い系譜の二人の共演シーンは目が離せなかった。

達也の葛藤…それは章人の優しい本質を知っているからこそのものであり、知っていながら目を背けた自身への後悔がシャッターを切らせない。言葉に出来ない葛藤を隆史が口にしてくれることで達也は救われているが、時間は戻らないし現実は変わらない。
映画のタイトルは「これはどこにでも起こりえる物語」としてのものなんだろう。

説明じみたところがほとんど無いまま緩やかに事実が繋がっていく構成なので、あまり映画馴れしていない人は戸惑うかもしれないが、小津作品や数多の欧州作品のような行間を読む雰囲気があり、日比遊一監督がもともとは写真家であったことを知ると腹落ちする。
ヴィム・ヴェンダースとアレックス・コックスが絶賛のコメントを寄せているのも納得。
重苦しいテーマの作品だけど、この二人の監督の琴線には触れるだろうなと思う。
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