ルイまる子

ノマドランドのルイまる子のレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.9
アメリカの広大な景色は本当にいくらでも見ていたい。しかし主人公の60代の女性、ファーンはこの美しい自然を見たくて旅をしているのではなく(いや、見る必要があるから続ける理由も理解したが)自分の家をなくしたからキャンピングカーでノマド生活をしている。ネバダ州のエンパイアという町に夫と住んでいたが、リーマンショックの大不況以降、実質その土地にはZipコードがなくなり(郵便番号がない=町として登録されていない)、閉鎖に追い込まれた。臨時教師だったが職も失くし、未亡人となり、「ホームレス」ではなく「ハウスレス」になった。ファーンを演じるのは『スリー・ビルボード』のフランシス・マクドーマンド。もうそこに佇んでいるだけで、心が豊かにこちらに伝わってくるではないか。特に変わり者というわけではなく、勇気があり自分の心に正直だから若い頃に家を出て自分らしく生活して来た(ここ刺さった。よく世間がアレコレ批判する人って特別じゃない。ただ自分の心に正直でそれを行動に移してるだけ)。この集団は生き方の知恵も心得ており、ノマド同士、お互に心優しく声を掛け合い、物々交換で足りない物を補い合い、踏み込み過ぎることもなく毎日健全に暮らす。国は老後の面倒を見てはくれないが、「アマゾン」という超メガ企業で季節労働をしている。お給料はしっかりもらえるし、この大企業がある限りはなんとかなる。この「アマゾン」がやたら出てくる。何度も主人公がアマゾンを当てにしている様子が出るが、「貧困に落ちた高齢者達を軽く見捨てる国へと凋落したアメリカ」で今、唯一頼れる屋台骨、それが「アマゾン」という意味か。

視聴中、きっと生々しい高齢者のラブシーンや、窃盗、ドラッグ中毒や、人間の醜い姿が色々出てくるんだろうアメリカ映画だもんな、と覚悟していたが、悪人は一人も出てこ来ない。セックスも犯罪もない!遂に2021年、アメリカも生まれ変わったのだ!厳しい現実と美しく広大な自然。アリゾナの砂漠、サウスダコタの岩山、心洗われる名作!

変わった形の石をプレゼントに🎁とか(物の価値はお金じゃない)、高校卒業記念に父から受け継いだ家族の記念の皿か割れ、接着剤で貼り付けたり、物質主義を否定、本当に心から大事な物を一生大事にする精神を取り戻そうだね!
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