サカナ

ノマドランドのサカナのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
4.3
叙情的とは感情を述べ、表すこと。
叙事とは起きた事をありのまま述べ、記すこと。
という言葉の検索をしてしまいました。
改めて、映画を観た感想を。
叙情的な映像と叙事的な映像が対比表現されており、主人公ファーンの心がそのまま映画になったように感じました。
ポスターになっているRTRの夕暮れの映像、淡い薄闇の空と、ランタンの灯り、人と人が集う事の安心感、和やかで穏やかな風景、堪らなく好きです。
一方、ヴァンの中での排泄や、ボロ布になった下着を洗濯するファーンの姿も淡々と、ありのまま描かれていて、現実を突きつけられ驚き、過酷さが痛いほど伝わりました。
ノマドの人々は、望みを絶たれその只中を彷徨う人々なのか?それとも絶望の中に希望を見出すことの出来た人々なのか?

観ながらずっとその問いが続きました。それはファーンがずっと抱いている問いなのだと思います。

でもさ、そもそもこの映画観てる自分だってさ、ほぼほぼ流されてここで生活しているし、自分で選択した事なんて人生の内にどれだけあるのだろう?
もしかして、というよりきっと間違いなく世の中の誰しもがノマドの人々になりうる可能性があり、もしくは皆広義の意味では、移ろい日々を暮らしている事には変わりがないのではなかろうか?と。

そんな結論に至るまで鑑賞後の帰り道、何度も反芻してしまいました。

あと、ルドヴィコ・エイナウディの音楽超いい!
サカナ

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