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ノマドランドのmuuumのレビュー・感想・評価

ノマドランド(2020年製作の映画)
3.9
何も起こらない、ひたすら内省の時間と
向き合うロードムービーでした

ノマドランド、と呼ばれる
放浪し続ける人
家をもたずにキャンピングカーや
車中泊ができる車で生活し続ける人

主人公のフォーンもそうで、
日雇いみたいな仕事を続けながら
家を持たず、転々としながら
人生を過ごしています

泊まる場所や働く場所、とりまく人は
変わり続けるものの、
フォーンの心と車は、一切変わらない

大切な人との出会いや家族との時間にも
「否」を示し続け、あえて簡単な幸せを
選ぼうとしない

彼女の心を聞けば、
亡くした孤独な夫への弔い、
彼への思いにひたすら向き合い続けるための
放浪時間だったのだと思う

彼の苦労や孤独を報いるように、
彼と同じ時間を過ごそうとしているよう
にも見えます

もうひとつは、田舎から出た人、
田舎を手放した人という部分
フォーンの妹の言葉がそれを物語っていて、
「あなたはいつも正しかった」
「私より真実を分かっていた」
といったような言葉が、
まわりからのぞまれるようにのほほんと
田舎で暮らすことと、自分の心に正直に
感じたまま生きること、この違いが大きく
あると思います
開拓者は、いつだってうとまれる

車は心を表していて、
亡き夫への思いにひと区切りがついた時、
車を手放すことを決める

人の心は誰にもコントロールできないし、
自分なりの答えが出るまでは、
丁寧に自分の心に向き合うことが
大切だと知らされる作品でした

ドキュメンタリーのように撮られる
フォーンの生活の様子、
アメリカでしか見られないような
景色には、思わず深呼吸したくなりました
からの、さまざまな労働の様子

対比するふたつに、どこかアンバランスさやアメリカが抱えているさまざまな問題が
隠れているようにも思いました

説明的ではない物語の描き方は、
とても好きな感じでした
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