takanoひねもすのたり

ニューオーダーのtakanoひねもすのたりのレビュー・感想・評価

ニューオーダー(2020年製作の映画)
3.5
ニュー・オーダー(新体制)ね(反射的にブルー・マンデーのイントロが頭に流れてしまうんだが、このタイトル😂)
ミッシェル・フランコ監督のディストピア物。

貧富の差が広がる2020年のメキシコ、上流階級のマリアンとダニエルの結婚パーティの只中、武装した暴徒が雪崩混んできた。
一方、マリアンは反乱軍の人質になってしまう。

暴動なら赤や黄色を使いそうなのに、何故グリーンなのだろうと思った後で、マリアンのスーツが赤なのが目に入り、赤の補色だからかなあと思ったり。 

監督の作品の中で一番観やすかった。
たぶん作品世界の視座をデカくとってるからだと思う、虚構の枠からでないので距離とって観れた。あと私が日本人ってこともあるかも、メキシコに住んでいたら捉え方は変わると想像する。肌の色で貧富の差が明確にされてたりするし。監督の過去作の方が題材が身近で現実事とリンクするので、そちらのほうがメンタルにはキツいなあ。

新体制で政府を刷新という大義でも、結局のところ割を喰うのは力の無い一般人なのよねってところ。
どの方面でも力が無い人間は、力を持つ側(暴力だったり雇用体制だったり権力だったり経済的な影響力だったり)にいいように駒にされてしまう。今作の場合、上流階級のマリアンもいいように駒にされたようなものなので、平たく考えると、貧しい者、無力な者、そして女性は捨て駒にされやすく"力のある男"の前ではどうにもならないってこと……なんだろうなあ…。

マリアンの身代金が80万+100万ペソが要求されてたから、それと比較すると元使用人の手術費用ってかなり高額なんだな。
海外の医療費事情を垣間見るたびに、私みたいなへなちょこは日本に生まれて良かったとつくづく思う。  

個々の登場人物にスポットがあたって掘り下げられる訳ではないので、画面の中で起こる出来事に対し、理不尽だな胸糞だなと感じはすれ、民間人の命は軽いなあ……ってところ。
ラストの焚き火(比喩)と絞首の差よ……どちらがより冷徹で無情なのか分んなくなる。
そしてどちらも所詮捨て駒なのよ。