髙橋佑弥

望まれざる者の髙橋佑弥のレビュー・感想・評価

望まれざる者(1949年製作の映画)
3.0
当初監督予定クリフトン名義ママ、急病代理によるクレジット辞退無署名…なアイダ・ルピノ初監督作。恋人に求婚されたが、前恋人時の妊娠発覚…"未婚の母"題材。車/バス/電車(模型)/メリーゴーランド…物語を推進させる契機となる乗り物頻出。出来自体は『ヒッチ・ハイカー』の洗練/卓越はない…まあ普通。

ただ、異様にボルテージ振り切ったラストの追跡劇は凄いし、ストレッチャーに乗せられて運ばれる主人公の主観風ショットに随分と長い尺を割いているのも変で印象的。悪意はないが倫理感はズレた脇役たち…立場を利用してデート誘う男、転居先を第三者に教える元大家、秘密を暴露病院長…粒揃い。代打として、ルピノが図らずも初監督作を手がけることになった経緯を考えると、作品の題名が『ノット・ウォンテッド』=「望まれなかった」…なの面白い。

「あたし…もう死んでやるーッ!」と自暴自棄になって駆け出した女を「待て!」と男が追いかける…という終盤の追跡劇、最後に男が盛大に顔からコケて、もはや絶望のあまり起き上がろうとすらせず固まってるところに、冷静になった女が駆け寄り「ふたりで頑張りましょう」…な展開、島尾敏雄『死の棘』っぽい。

2020/08/11
髙橋佑弥

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