さく

アイの歌声を聴かせてのさくのレビュー・感想・評価

アイの歌声を聴かせて(2021年製作の映画)
3.0
鑑賞予定なかったのですが、評価良さそうでしたので見てみました。若干、若者向けにチューニングされている感じですかね。

以下、ネタバレを含みます。

冒頭からのIotの描き方は、現代のテクノロジーにアップデートされていて楽しめました。昔からある、朝起きて、自動でコーヒーが淹れられる(だいたい溢れる)、トーストが焼かれる(たいたい焦げる)...みたいなSF作品お約束のシーンもいよいよ見られなくなり、今後はこんな感じになっていくんでしょうかね。実際こういうのを導入するにあたっては、都会よりも本作みたいな田舎で新興都市を立ち上げて一気にIot化みたいな方があっという間にできそうです。

シオンが危険因子だとして襲われるシーンは、突然激しいシーンとなるので、果たして若い子たちはついてこれるのか? と不安になりました。何故そこまでやられる? とちょっと唐突な感じがしないでもないですが、AIが「自分で考え始める」ってのは極めて危険と見做されているということですね。未知の領域への畏れです。

AIはややもすると、「自分で勝手に考えて仕事をしてくれる便利機能」みたいな誤解をされることが多いですが、断じてそんなものではないと思います。誤解を恐れずに私の考えを述べると、「AIとは数多くのデータを事前に読み込んでおいて、それを元に予め決められた手順によって超高速で計算をして答えを出すロボット」に過ぎないので、「勝手に自分で考える」なんてことをされたら困るわけです。そんなことをされたら人間には制御不可能な存在となりかねない。AIとはいえロボット三原則に準ずることが必要で、それを破ろうとする(破った)シオンは「人類にとって危険である」と判断されたわけですね。

シオンを破壊しようとする大人の側を単純に悪者としてしまうのは、ちょっと考えが浅はかであると思います。そういう意味ではもう少し大人側の主張にも理がある、という点を描いても良かったと思います。AI(ロボット)が人間の愛によって感情を持ち出すというのは、ある場面では美しくもある一方、場合によって悪い感情を持ち出す危険も孕んでいるという怖い一面もある(だから大人は恐れている)ということを視野に入れることでSFとしての深みは増すのではないでしょうか。
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