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頭痛が痛いのKUBOのレビュー・感想・評価

頭痛が痛い(2020年製作の映画)
4.0
今日の試写会は『頭痛が痛い』チネマットオンライン試写会。

細かいところに注文はあれど、作品自体、すごいパワーを持ってるし、重要な問題提起をしている作品だ。

「死にたい」「死にたい」「死にたい」ネット上に氾濫する自殺願望のツイート。

援交しているラブホから配信して、ネット上に救いを求める女子高生ナルミ。

普段は優等生の仮面を被っているが、マンションの郵便受け全部に「遺書」を投函する女子高生イク。

「死にたい」ふたりが出会った時に、何か前とは違った温もりが生まれるのだが…

なんと言ってもイクちゃん役の「阿部百衣子」とナルミ役の「せとらえと」がいい! 個性も豊かだし、このふたりだけのリアルな世界を表現できている。

「大人たちの作ってる空気みたいなものに押しつぶされるようなもんだよ」

「イクちゃんが死にたくなったのは、がんばってた証だよ」

印象的な台詞がポンポン飛び出してくる。

それに比して、大人の台詞と芝居がついてきていない。親や教師の描き方があまりにダメな方のステレオタイプで、ここにリアリティがあれば、作品のレベルはもっと上がった。

「死にたい」という言葉は同じでも、それを発する人や状況によって、その言葉が意味するところはひとつではない。

まだまだ狭い自分の世界で、息が詰まるような「憂鬱」な日常からの脱出を「死にたい」と表現するものもいれば、その中に本当に自殺したい者もいる。

作品は最後までグレーのままで終わる。「こうあるべき」と理想的な解決を提示しないところに、この問題に真摯に向き合う姿勢を感じる。

スマホの縦長画面を真ん中に挟んだ映像は、なかなか革新的。

また建設中の新国立競技場を象徴的に使っているのも「今」を感じさせて上手い。

ただ、ハンドカメラは揺れすぎ。映画館で見たら絶対酔う。

『頭痛が痛い』という変なタイトルと独創的なポスタービジュアルに惹かれて関心を持っていたタイトルだったが、十代の悩める青春を描いて、グイと心を掴まれた。

監督の森田悠人、ダブル主演の阿部百衣子、せとらえと、新しい才能たちも要チェックだ。
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