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シングルマンのp99のレビュー・感想・評価

シングルマン(2009年製作の映画)
4.1
静かな、凛と張った雰囲気の中、大学教授であるジョージ(コリン・ファース)は過去へと思いを巡らせる。そして、愛について、死について考える。なぜなら、長年連れ添った彼の恋人が交通事故で亡くなってしまったから。

その恋人は男性であった。迷いなく愛してくれる彼にジョージは永遠の愛を感じた。しかし、作中の彼の言葉を借りれば、「死が未来だ。」遅かれ早かれ、誰にとっても行き付く先は死である。

「愛」と「死」は非常に近しい関係にある。恋人の死に直面して、ジョージはそのことを強く意識するようになったのだろう。本当の愛を失ってしまった彼は、今後どのように振る舞うのであろうか。

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しばらく一人(シングル)でいた彼の前に、様々な人が現れる。大学の教え子、店で偶然知り合ったスペイン人、一時体を重ねた女。彼らは皆、ジョージの様子を観察し、少しでも助けになりたいと彼に近づく。

その中で、最も彼に対する思いが強く、かつそれが明快なのは教え子であるケニー(ニコラス・ホルト)であろう。ケニーに対しては、だんだんと心を開くジョージの様子が窺える。

ジョージのケニーに対する言葉は、ジョージ自身に対して発されているようにも思える。

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本作は同性愛者であるトム・フォードが、彼自身の「心象風景」を描いた作品だと言えるであろう。英国紳士であるコリン・ファースの所作を借りて、トム・フォードが自分の美意識や価値観を画面に映し出す。

映画に登場する同性カップルはトム・フォードと彼の年上の恋人の分身だと捉えられる。落ち着いた年上の男性(コリン)と一途な年下の男性の関係。そこにはトム・フォードの理想とする愛がある。それは肉体的でなく、精神的な繋がりに重きを置いた美しいものであった。

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ジョージの行き付く果てを、シックで落ち着いた色彩を通して確かめてもらいたい。