永遠の寂しんぼ

パリのどこかで、あなたとの永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

パリのどこかで、あなたと(2019年製作の映画)
3.8
『きみを好きになることは、自分を好きになること♫』

今年からフランス映画はできる限り観ていくつもりなので鑑賞。前半は退屈というか何がしたいのかよく分からないシーンが多かったものの、後半である程度それらが前振りだったと気づける。原題の«DEUX MOI»通りW主人公のレミーとメラニーの仕事でのストレスや満たされない恋愛感情、都会の喧騒の中で独り暮らす寂しさが丁寧に描かれていた。

今作で描かれたパリは『花の都』らしさは控えめで、無数の人や電車が行き交う現代の都会として強調されている。恋人のいない寂しさを埋める為にメラニーが取る手段はマッチングアプリ。どんなに華やかな異国の街でもそこに暮らす一人一人が現代的で生々しい事情を抱えていると思い知らされる。

今作は恋愛映画には違いないけれど、どちらかと言えばそれを完成させる為の人間ドラマに焦点が当てられた不思議な構成。恋愛に悩む描写がメラニーに偏っているのは気になったものの、自分自身を見つめ直すことで初めて誰かと出会える事を丁寧に描いていたと思う。

もう何年も心療内科のカウンセリングや大学の学生相談室のお世話になってきた人間としては、2人が受けるセラピーのシーンは感慨深いものだった。2人ともストレスや罪悪感の原因を忘れているわけじゃない。でも、問題を問題として認識するまで問題は問題にならない。自分で自分を見つめ直すことで他人への理解の仕方も変わっていく。臨床心理士の方々はまさに自分を見つめる為の鏡になってくれる存在であり、ただ話を聞いているだけに思えて的確に己を見つめる角度を調整してくれている、本当にありがたい職業だなと再認識しました。

少し残念だったのは自分を見つめていく映像的な描写がレミーに偏っていた事。メラニーが抱える問題に向き合っていくシーンは台詞説明が多かったと思う。もう少し彼女の家族について映像でもって説明が欲しかった。

とはいえ可愛い子猫や日本人ならクスリとしてしまうようなシーンの他、おおよそは軽い感じで親しみやすい内容の映画でした。今後も沢山フランス映画を観て、それらの共通項を見つけていきたいです。