九月

キャッシュトラックの九月のレビュー・感想・評価

キャッシュトラック(2021年製作の映画)
4.8
とある現金輸送車が襲撃されるところから始まり、かなり重要なシーンであるのだろうが、そこに主人公役のジェイソン・ステイサムの姿はない。
手際よく金を持ち出す強盗たちは、無線でやりとりをしていて、割と人数の多いグループでの犯行かと思われる。
ここでまず、主人公とこの事件に一体何の繋がりが…?と疑問を抱き、そこから、時系列が入り乱れながらも明かされていく全貌に目が離せなかった。

LAにある現金輸送車の警備会社「フォーティコ・セキュリティ社」に新入りとしてやってきたパトリック・ヒル(通称H)。
現金輸送車は、銀行だけではなく百貨店やカジノなど、あらゆる場所から集められた多額の現金を日々運んでいる。その車を運転する者は、ただの運転手ではなく、特殊な訓練を受け厳しい試験をパスした強者にしか務まらない。

試験をぎりぎりで合格し、射撃や運転のスキルも平均的だった彼は周りから特に気に留められる存在ではなかった。
しかし、ある日の仕事中、強盗に襲われ仲間が人質に取られた時に、信じられないくらい高い戦闘能力を発揮し、ひとりで阻止することに成功。
仲間内ではヒーロー扱いされ、社内での地位を確立していく。
数ヶ月後、再び別の強盗によってHの乗るトラックが襲われた際、今度は立ち向かうまでもなく、彼の顔を見た犯人たちが何故か金も奪わずに逃げ出してしまった。この辺りから、同僚たちの間でHは一体何者なのか…?という疑念が生まれ、社内では、彼には何か企みがあるのではないのかと疑心暗鬼に。

Hは一体何者なのか?何が目的なのか?ということ、
多額の現金がすぐそこにあるという環境で働くフォーティコの社員に良からぬ考えが浮かぶことはないとは言い切れないのではないか、
最初に見せられた事件は何の関係があるのか…
等々いろんな疑問を浮かべてドキドキし、それらがひとつずつクリアになっていく展開にハラハラした。

映画の中での、悪いことをした者には自分にもそのツケが回ってくるなど制裁が下される、というのもフィクションとしては好き。目には目を、歯には歯を、ならぬ○○には○○を…スカッとできる終わり方だった。
でも、ガイ・リッチーにしては、いつになく終始重厚なトーンで、全く笑わない主人公が抱える怒りや悲しみに共感して、辛い気持ちにもなった。

映画館で観て、響き渡る銃の音や重低音の効いた音楽も存分に堪能。
ガイ・リッチーの映画やっぱり好きだなぁ。
九月

九月