YAJ

皮膚を売った男のYAJのネタバレレビュー・内容・結末

皮膚を売った男(2020年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

【遊びやせんと】Why do the world’s elites train their aesthetics?

 英国のRCA(ロイヤルカレッジオブアート)が、グローバル企業の幹部向けトレーニングプログラムという新たなビジネス分野を拡大している。現代社会の諸問題は、ロジックや方程式では解決できなくなってきたので、直感や感性で立ち向かえということらしい。
 あるいは、SNSなどを通じて、誰もが同じ共通認識を持ち、「正解がコモディティ化」している。ビジネスでの成功は、究極のところ、いかに他人と違うことをするかに尽きる。そのために鍛えるべきは美意識なんだそうだ(『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(山口周著)からの受け売り)。

 そんな、昨今のアート界隈のあれこれに思いを馳せながら美術にまつわる作品を2作品、どちらも100分前後の小作品だったので、映画館をはしごして(長野相生座⇒千石劇場)、一気見した。実に面白かった!



(ネタバレ含む)



 一作目の『皮膚を売った男』は、「もしも生身の人間が芸術作品となり、売買の対象になったら」という現代アートの巨匠の提案を受け入れるシリア難民を通し、現代アートに対する偽善、欺瞞を風刺、さらには移民・難民問題をも描き出そうとするなかなかの意欲作だ。

 人間の皮膚が、肉体がそのままアートになる。江戸川乱歩の『人間椅子』、いや、『家畜人ヤプー』をまず思い出したりして、それだけでゾワゾワくる設定だ。

 アーティストとは、きちんと契約を結び、主人公のサムは、報酬とそれなりの自由を手に入れるのだが(背中に彫られたタトゥーがVISA - 出入国査証 - ってあたりが皮肉が効いている)、展示企画の開催中は、アート作品として美術館の一室にじっとして背中を曝していなければならない。人権保護団体が騒ぎ出し、それによって注目を浴びることで、アート作品としての価値があがり、さらに大金を手にするようになる・・・。

 冒頭シーンが、額装された皮膚であり、暗たんたる末路を想像せざるを得ないオープニングだったが、世の中を嘲笑うかのように、アーティストとサムが仕掛けたどんでん返しが痛快である。

遊び心があって、よろしい!
YAJ

YAJ