ShinMakita

映画大好きポンポさんのShinMakitaのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
1.4
映画の都、ニャリウッド。映画会社「ペーターゼンフィルム」の責任者であるプロデューサー・ポンポさんが、映画オタクである制作補ジーンを新作映画「Meister」の監督に大抜擢。素人同然のナタリーをヒロインに起用し、ベテランの名優マーティン・ブラドックを主演に迎えた。緊張と不安しかないジーンだったが、頑張り屋のナタリーや気さくなマーティン、そして温かいスタッフたちに支えられ、無事撮影を終了させる。が、映画づくりはここからが本番。地獄の編集作業が始まるのだ…


「映画大好きポンポさん」

以下、「ネタバレさんが、帰ってきったぞぉ〜〜っ!


➖➖➖

まず、一本のアニメ映画として面白いし見やすいと断言はしておく。テンポやカットバック、ワイプなど、アニメらしくて楽しいし、キャラも可愛い。90分という尺の中で、「夢に向かって進むことの素晴らしさ」を無駄なく伝えているし、若いキャラたちの成長もきちんと描かれる。オーソドックスすぎるし、土下座シーンや融資決定のくだりなど、「おいおい、日曜劇場かよ」というくらい和風で、ナタリーの描写も「ハリウッドの新人女優」どころかアメリカ人女性らしくもなくジャパニメーション・ヒロインの典型のようなイノセンスぶりでシラケるといえばシラケるんだけど、まあ許容範囲。そもそもポンポさんのキャラ自体が超現実的なんだから。


お仕事映画としても、興味ぶかいところは多分にあると言っていい。スケール感に乏しい映画製作描写だったけど、「編集」に比重を置いたとこは楽しかった。映像素材を切り貼りして一本の作品に仕上げるのは、やはり1番の醍醐味だしね。
ただ、実写映画製作の現場をアニメで描くのは、どうしても違和感がある。生身の人間が醸し出す美しさや感動的な演技は、アニメのようにデフォルメが必然である表現方法で表せないのではと思ってしまった。アニメ映画製作の話にすりゃ良いのにと思ったのが正直なところ。



…そもそも、俺タイトルがおかしいと思う。映画大好きポンポさんじゃなくて、「映画作り大好きポンポさん」だよなと。映画好きと映画作りが好きってのは似て非なるもので、40年純粋に「映画好き」で来た俺には、短い尺こそ善というポンポイズムは全く受け入れがたいものがある。当然ジーンに感情移入していくわけだが、それでもある程度の映画ファンなら、「映画作り映画」としての目新しさは感じられない。撮影現場のワチャワチャ感は「アメリカの夜」を観ればいいし、製作の内幕ならアルトマンの「ザ・プレイヤー」の方がパロディと皮肉が効いているし、ナタリーとミスティアの関係性のリアルは「イヴの総て」で知ることが出来るし、一本に賭ける情熱ってとこでは「竜二forever」の方が熱い。そして、実人生を映画に反映させる監督の躁鬱ってところでは、やはりフェリーニの「8 1/2」を超えられないでしょう。何を今更、な気分になってしまったのは否めないところ。映画作りを目指す若者には刺さるだろうけど、ごめんなさい、おじさんには刺さりませんでした。

ただ、この作品の作り手が映画好きでもあり、映画作り好きでもあることはしっかり伝わって来た。核の部分で結構似ている「カムバック・トゥ・ハリウッド!!」と同時期公開という幸運もあって、観る価値は大いにあったなとは思いますよ^_^
ShinMakita

ShinMakita