みかんぼうや

映画大好きポンポさんのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

映画大好きポンポさん(2021年製作の映画)
3.8
【映画製作を通じて若者たちの自己実現への熱い想いを描く、人生教訓に満ちた上映時間90分】

ハリウッド(映画内ではニャリウッド)の敏腕映画プロデューサーのポンポさんが小学生の女の子みたいな外見とキャラだったり、その他の登場人物のデザインも、若年層向け?のようなキラキラした画で、ジャケ写だけ見ると自分からは手が出ない作品で、事実、観始めて10分くらいは、この世界観が違和感の塊で、何度も観るのを止めようかと思いましたが、フィルマ評価は高い作品なので頑張って観続けていたら・・・

その画とは裏腹に、登場人物たちが発すること、感じることは大人が観ても十分、いや、ある程度仕事観や映画観のある大人が観るとより深みを感じられるような作品で、みるみるうちに引き込まれていくのです。気づいたら、最初に感じていた画やキャラクターの違和感なんて全く感じないくらい、そのストーリーの虜になっていました。

映画製作の舞台裏を描いた作品というと、先日観た「映画に愛をこめて~アメリカの夜~」や「キツツキと雨」などの実写映画がありますが、それらは撮影現場における監督の苦悩にフォーカスしているのに対して、本作は映画製作を題材に若者たちの自己実現を描く青春物語に見えました。

正直、予定調和と綺麗事のオンパレードですし、登場人物も分かりやすいくらいいい人たちばかりで、嫌な人など一切出てこない。私、こういう人間臭さや生々しさのない作品は本来引き気味で苦手な天の邪鬼なのですが、本作はアニメだからかそのあたりはすんなり流せてしまいました。それ以上に、本作から伝わる映画製作への熱量と、その中で生み出される作中の数々の名言たちが胸に突き刺さり、その苦手意識を遥かに凌駕してくるのです。

「幸福は創造の敵」「君は映画の中に自分を見つけたか?」「何かを残すということは、それ以外を犠牲にするということ」・・・映画製作観だけではなく人生教訓のような数々の言葉が、この作品の中で何度も登場し、その度に思わずハッとさせられました。その点でも、映画製作の裏側を楽しみつつ、その過程を通じて観る人の人生観を刺激するような映画で、多くの方が書かれている“映画愛”以上に、“迷える若者への応援歌”のようにも見えました。

画や作品の雰囲気の好みは相当出ると思いますし、実際に私もかなり抵抗感がありましたが、内容はストレートで分かりやすくも、しっかりとしたメッセージ性を持った、中高生から社会人までお薦めできそうな作品でした。
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