Sachika

声優夫婦の甘くない生活のSachikaのレビュー・感想・評価

声優夫婦の甘くない生活(2019年製作の映画)
4.0
ジャパンプレミアにて。

長年映画の吹き替えで活躍していた老夫婦が、ソ連からイスラエルに移住し、新しい生活をスタートさせる。
しかしそこには職業、年齢、移民、政治、様々な問題があって、そして妻の秘密をきっかけに、次第に夫婦関係にも亀裂が入ってしまう。
ビターだけどクスッと笑えて、そしてフェデリコ・フェリーニ含め、映画愛に溢れてる作品!

口に出す声は聞こえるけど、心の声は聞こえない。
ましてや言葉や愛は目では見えない。
長年声優として活躍した二人でも、言えない台詞はきっとある。
お互いに聴こえていない心の声は、観客の私たちの方がずっと多く気づけるし、見えなかった物も見えるはず。

イスラエルでは映画館の封鎖でまだ公開できない状態だけど、日本の映画館で上映できることが本当に嬉しいと、監督はお話しされてるそうです。
映画に携わる人間として1番ダメなやつだろ…!ってシーンもいくつかでてくるけど、本当に映画愛に溢れてるし、ぜひ映画館で見てほしい作品。
今回はそれもあって、ヒューマントラストシネマ有楽町での上映でした。

ストーリーはクスッと笑えるシーンも多く、会場にも笑いが。
なんたって妻のラヤの再就職先はテレフォンセックスの仕事…!
常に誰かの喘ぐ(演技)声が聞こえてるw
(イイ時って、ハラショー!って言うんだなとまじまじ見てしまった)
でもそこでラヤの声優としての演技力が、聞いてて鳥肌たつくらい活躍します。

また後半はラヤの気持ちになって、胸がぎゅーってした。
声だけの仕事、顔が見えない世界で、自分はどう映っているのか、会ったらガッカリされてしまうんじゃないか、年齢を言ったら?とか、今のSNS時代に沁みる。

夫婦のチグハグな会話や思いも映画の見どころ。
夫のヴィクトルのために多くのことを我慢してきたラヤ。
ラヤが心配で仕方ないヴィクトル。
二人とも言葉には出さないし、口にできないけど、愛情があるとわかるシーンが沢山で、見ていてつい顔が綻んでしまう。

それにしても声のお仕事ってすごいなって、改めて声優という職業に圧倒させられる。
用意されてる台詞を言うだけじゃなく、彼らが「作品に命を吹き込んでる」んだなと、とても納得した。
作中名言もたくさんで、本当に映画というものに愛を注いでいる映画だなと思いました。
Sachika

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