春九千

マッドマックス:フュリオサの春九千のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

IMAXで鑑賞、感じたのは懐しい狂気

全体的にシリーズのテーマを踏襲し、その狂気はさらにパワーアップしてる
カットの仕方、章の構成で劇画さもあがり、そのドラマティックさも増してる

マイルドと感じる人もいるようだが、やはりそれはストーリー性が濃くなったからだろう
気持ち悪くなりそうなエグめの描写は多く、全くマイルドではない

まずは何と言ってもフュリオサの目

普段は可憐で愛らしいアニャ・テイラー=ジョイが今作では豹変
なんとも言いようのない油絵のようなドロっとし、いまにも感情が吹き出しそうな目

復讐に駆られるその様はまさにマックスを彷彿とさせる
とくにクライマックス、ディメンタスを追いかける顔のズームはどこか古めかしく、まざまざと狂気を映し出すその姿に旧一作目を感じざるを得ない

ポリコレじみたものはなく、ジャックとの決して恋愛感情ではない心の通わせも渋い

そしてその対峙するディメンタス、子を亡くし狂気に包まれるその姿は容易に想像できる

劇中でも露骨に触れる通り、彼とフュリオサは瓜二つであり、旧一作目のマックスと暴走族の関係
今作では彼らを分け隔てるものは更に薄くなっている

今作の復讐はまったく斜め上をいくもので度肝を抜かれたが、命の再生であり、彼女の将来と悲しみを持つ人々に希望をもたらすものと感じた

もう一人のキーパーソンはジャックだろう
見た目で言えば、長く伸びた髪を適当にかきあげ皮のスーツに身を包むその姿はまさにマックス

戦い方を教え、ショットガンを手渡したときマックスが引き継がれたと思わずにいられない

この物語が全て後世へ語り継がれたものだとしたら、ディメンタスの最後のように曖昧な物語だとしたら
デス・ロードのマックスもあったかもしれないし、今作のジャックが本当のマックスかもしれない

たしかに一瞬インターセプターと男の映る嬉しいサプライズもあったが、そんな妄想をすれば、もう一度マックスは守るべきものを得て死ぬことができたと考えると感慨深い

ほかにも前作の登場人物のほか設定も深堀りされてすごく面白かったし、同じマシンも登場しなんだか馴染み深い
何代もウォータンクがあったとか、ギター男は恐らく『砂漠の40日戦争』の士気上げで配置されたのだろうとか、想像が面白い

さらにさらにバイクで引きずり回したり、チェーンに片腕が残るとことか、そこかしこにオマージュ的なものがあり見てて楽しい

車、バイクの衝撃は前作に及ばないが、その製造工程や数多のギミックを見せてもらって満足

それぞれ個性的なエキゾーストノートはIMAXのスピーカーで聴けて快感を覚える
ハーレー、BMWの水平対向、ヤマハのビッグオフ、極めつけは星型エンジンに、お決まりのV8

しかしまあ、目には目を、歯には歯を、未だ憎しみと欲望の連鎖を断ち切れない人類の行き着くところはこの世界なのか

期待を裏切らない大作、もう一度旧作から狂気に触れたくなる一作でした
春九千

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