ブルームーン男爵

陶王子 2万年の旅のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

陶王子 2万年の旅(2021年製作の映画)
3.8
「陶王子」というキャラクターが、陶磁器を巡る2万年の歴史を巡るドキュメンタリー映画。ゆったりとしたテンポ感でナレーターもおっとりしていて眠くなるかと思いきや、陶磁器の歴史をとても興味深くみれた。陶磁器を発展させてきた陶工たちには頭が下がるし、発色等についての説明は科学的で非常に勉強になった。

「陶磁器」は、「陶器」と「磁器」の総称である。陶器とは粘土を焼いたもので、石を砕いたもの(うわぐすり)を塗って焼いて表面がガラス質になったものを磁器という。時代的には陶器が先であるが、ただの陶器は水を通してしまう。うわぐすりの発明により、水を通さず、光沢が美しい磁器が中国で誕生するのである。

白磁・青磁だと中国の景徳鎮が有名であるが、白色や青色を出すのがここまで大変だとは知らなかった。それにしても窯をあけて出てきた景徳鎮の磁器のあまりの美しさにため息が出た。

中国の陶磁器は西洋で輸出されるが、製法は極秘であり、西洋諸国はその再現を試みる。これに成功したのがドイツの有名なマイセンである。西洋では東洋伝来の陶磁器は重宝されていたという。ドキュメンタリーでは中国からの陶磁器コレクションしか映していなかったが、日本の伊万里焼等も重宝されていた。個人的にはもうちょっと日本の焼き物(伊万里焼とか有田焼とか)の話があったらうれしかった。

また、古代エジプトのファイアンスという青い陶磁器には目を奪われた。青色の発色は難しく、ラピスラズリなどの青い宝石を使い方法はあったが高価であり、ファイアンスはその代用の技工であったがエジプト王朝滅亡により技術が失われ長らく技法不明だったが、東海大の山花准教授らが再現に成功したという。

陶磁器にこだわる日本料理人やフランス料理のシェフが出てくるが、ちゃんとした料理は器と一体で構成される一種の芸術だなと思った。

ちなみに、ポレポレ東中野で鑑賞したが、映画の後にトークショーがあってさらに監督まで登場のサプライズがあった。本当に良いドキュメンタリーだった。コロナで家にいる時間が長くなったので、食器にこだわったり、陶磁器に思いをはせるのも良いと思う。