ブルームーン男爵

METライブビューイング2023-24 ビゼー「カルメン」のブルームーン男爵のレビュー・感想・評価

4.3
事由奔放な主人公の女性カルメンに恋をした男を描いた悲劇。現在ではビゼーの最も人気なオペラとして知られている。初演の評価は高くなかったというが、当時の時代背景を考えると内容的に仕方がないか。

それにしても20代の若さでありながら世界を席巻するA・アクメトチナの美声がとにかくたまらない。驚愕の才能だ。深紅で艶っぽく品がありながら、ワイルドさも兼ね備えたロシアの名メッゾソプラニスタである。

原作は19世紀初頭のスペインのセビリアであるが、本公演では、現代のアメリカの産業都市を舞台としており、途中でトラックが出来たり現代的な演出が興味深い。スペイン舞台のフランス語オペラの舞台をアメリカに移したので、なかなか複雑な設定だ。

ただやはりスペインのオペラを現代アメリカとすると、本作の持っていた陽気なラテンの雰囲気がやや感じられなくなり寂しい気もする。ただオペラは新しいものを取り込んで進化するので、これもこれで楽しめるものだった。