ノラネコの呑んで観るシネマ

おもいで写眞のノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

おもいで写眞(2021年製作の映画)
4.2
メイクの仕事を志し上京するも挫折し、故郷の富山にUターンした深川麻衣が、役場で働く幼馴染の高良健吾から、過疎の街の老人たちの遺影写真の撮影を依頼される。
老人たちからは縁起でもないと拒否されるが、遺影ではなく思い出写真と名を変えたところ、依頼者が徐々に増えてゆく。
熊澤尚人のオリジナルなんだけど、これはほっこりする佳作。
前半は思い出写真のコンセプトが、街の老人たちに認められるまで。
後半はそもそも「思い出」って何?というプチ「ビッグフィッシュ」みたいな記憶を巡る疑問が、主人公自身が抱えるトラウマと絡み合う。
老人たちの思い出が全て美しい訳でも、全員が完璧な人生を送ってきた訳でもない。
思い出の持つネガティブなサイドを見たことによって、主人公は自身の過去と向き合わざるをえない。
彼女のキャラクターは病的に嘘が大嫌いで、まっすぐというよりも29歳にしては子供っぽい。
終始仏頂面で要領が悪く、ぶっちゃけ非共感キャラぎりぎりなんだが、徐々に彼女の心の傷の正体が見えてきて、それが思い出の本質を知ることで癒されてゆく。
まあアラサー女性としては、やっぱちょい子供っぽいと思うが、その分成長は強調されているので後味は良い。
そらあんな写真を撮ってもらえたら、嬉しいだろうな。