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靴ひものロンドのmityのレビュー・感想・評価

靴ひものロンド(2020年製作の映画)
3.5
崩壊からの再生、とこの映画を説明している文章を見かけたけれど、私には、壊れた家族が音を立てて崩れる様を描いた映画にしかみえなかった。

いやーめちゃくちゃな夫婦だったなと思う。

浮気を伝えて、それでアルドはどうしたかったんだろうっていうぐらい中途半端な行動に、なんて煮え切らない人なんだろうと思った。いっそ振り切れば良かったのに。
そのアルドの突然の浮気報告から、徐々に精神を病んでいった妻ヴァンダ。子どもたちに会いに来ても自分の元には留まってくれないアルドに気を狂わせ、それでもなお離れられないヴァンダの目には、もう子どもたちの姿は映っていないようで、否応なしに巻き込まれた子どもたちが気の毒でならなかった。

どうしようもなくこんがらがったふたりに対し、強烈なしっぺ返しが待っていたラスト。アルドとヴァンダに秘密があるのなら、アンナとサンドロにだって秘密はある。

いやーめちゃくちゃな家族だったな(笑)


#103_2022

他のユーザーの感想・評価

TEPPEI

TEPPEIの感想・評価

3.5
書き溜まっているレビューが多いので、取り敢えず自分のペースで消化。まずはイタリア映画界の名匠ダニエーレ・ルケッティ監督の「靴ひものロンド」。1980年代の初頭。ナポリで暮らす4人家族の平穏な日々は、父アルドの浮気によって一変し、娘のアンナ、息子のサンドロは母ヴァンダのいるナポリ、アルドの愛人宅のあるローマを行き来する。壊れていく夫婦関係、しかし時は流れ、そこには年老いたヴァンダとアルド。2人の夫婦関係は戻っていたかのようだったが…。

全米で絶賛された家族小説の映画化であり、この手の作品はミスリードしがちだが、決してミステリでもないし、泥沼離婚劇のそれではない。いかんせん、イタリア史や国際情勢におけるイタリアの立ち位置は戦時中ならまだしも、戦後のことは当人が全く知らないため幾つか勉強してから鑑賞するケースだった。そうすると都市化構造や80年代のファッション面での演出に非常に力を入れていることは理解できたし、ルケッティ監督らしいスリリングな作りとシリアスなシーンなのに観客から観ると笑ってしまう第三の壁の構造は見事で、そういう面では貫禄があって面白さより巧さが勝っていた。
特にナポリとローマの対比は顕著で、人間の嘘と真実の二律背反的な面白さは正直惜しい。はっきり言えばかなり説明的で、わざわざセリフで説明しなくても、2人の子どもから見る「夫婦関係」に特化して子供の視点に注力すればいいのに、全部説明しちゃうので丁寧っちゃ丁寧。だから後でやや捻りを効かせたつもりでも、観客の殆どは予測できちゃうと思うので、4人の家族を描くにはもっと他愛のない会話劇と内に秘めたものをどう見せるかのバランスが欲しかった。

役者たち、子役たちは本当に上手くて、家族の問題や社会通念を伝えるには抜群のキャスティングだったと思う。家族全員の真っ正直な演技のおかげで、家族劇として飽きないし、「靴ひも」というワードが様々なミーニングになっていて、この靴ひもについて説明過多になっていないのは好感が持てた。
興味深いのはマッシモ・カンティーニ・パリーニがファッションで夫婦関係や登場人物たちの身体が何を伝えるか工夫したと言う点だ。たとえば髪型やクラシックな衣装で、時の経過とセンスの変わり方、視覚的にキャラクターを見せているので、やはり単純に脚本がもっとトーンを暗くしてくれたら、さらに面白かったと思う。

総評として、「靴ひものロンド」は退屈させない家族物語だが、今少しもう一つぐらいの捻りとサプライズ、そしてドラマに起伏があると良かったが、それでもルケッティ監督らしい色彩豊かで安定した作品として楽しむことが出来る。
JUNPEI

JUNPEIの感想・評価

4.1

このレビューはネタバレを含みます

こんな両親の元で育つ子供の気持ちも考えてみろよ…おい…!と、感情移入して観ていたのでラストがめちゃくちゃ良かった。
ちみこ

ちみこの感想・評価

3.6
序盤の浮気がどうこうってくだり、、
そこから両親の行動、発言全てに理解ができないままに話が進んでいくけど、

しょうもない親の都合に振り回され続ける子供たちがずーーーーっと可哀想。
せりな

せりなの感想・評価

3.0
夫の浮気の告白から壊れていく家族の物語。

靴ひもの結び方という共通点をポイントにこの家族の関係をひもの結び目に例えて紐解いていく構成が面白かった。夫には終始ふざけるなよって気持ちしかなかったけど、無自覚に面倒ごとや責任から逃れようとした人の末路なのかな。
母親の奇行は夫の浮気でメンタルが壊れてしまったのかなと思えたけど、晩年に復縁したのは執着が捨てられなかったのだろうか。
夫が愛人とうまくいかなくなったら縁を戻そうとするのは想像できるけど、妻が受け入れた理由が謎だった。

オチはある意味スッキリするので、面白かったです。
猫ちゃんは無事で良かった!
家族の物語ではあるけど愛とか絆ではなく、うわべだけの関係が何を齎すかだと思った。
築浩

築浩の感想・評価

2.7
[SCREEN] ♯1
2022-332
未記録作品大量の為、記録のみ
Scriabin

Scriabinの感想・評価

3.8
ちょっと残念だった。原作の面白さを殺してこそいないものの超えてはいないのは、もはや仕方ないことなのかな。これまで原作に忠実でない映画化は滅ぶべきとか思ってたけど、はじめてそれがいかにつまらないか分かってしまった。妻、夫、子供たちと、語り手を変えていく順番も、それぞれの語りが補い合って何があったのかわかっていくところ、そして自由に変わる時間などは全て原作の手法に則っていたと思う。その面白さは壊れていないけど、新しく何かを付け加えたり置き換えたわけではない。
俳優陣は最高だった。予想していた通り。音楽も楽しかった。
冬の夜ひとりの旅人がの朗読えもすぎた
JinRock

JinRockの感想・評価

2.5
2022年88本目
嫁、ぶち怖い…。
あんな事やらかしちょるのに、歳とって仲良くできるわけないじゃろ…。
昔と今を混ぜくるのに少し考えたが、最後のオチはスッキリした。
maccouq

maccouqの感想・評価

3.8
ジェンカって同じ方向に皆進んで回るという楽しいシーンから、夫の浮気告白。過去の関係を告白したのだと思ったら、関係は継続してるし、夫は家を出る(追い出された)。靴紐の結び方で、また家族再生?。
家族というのは不思議なもので、夫婦、親子、きょうだいが理解しあってない、もちろん愛がなくても、憎しみあっていてさえも、なぜか、そのまま、ともに過ごせたりする(ものすごくもめて絶縁ってこともあるけど)。で、30年後。これはこれで、すっきりしてよいのだと、30年お疲れ様。しかし、やっぱり、これはホラーだな。
メモ lacci(原題)の意味:細い紐(靴紐)、投げなわ、罠、たくらみ、きずな、関係
靴ひものロンド

9/19 鑑賞🎥

キノシネマ立川高島屋

★75点

小説「靴ひも」を映画化した家族ドラマ。

ある日、夫が妻に何故か浮気を報告。

そこから巻き込まれる娘と弟。

3部に物語が繋がれて解消されて行き、最後にわかる衝撃が何とも言えない。
usa

usaの感想・評価

-

このレビューはネタバレを含みます

原作も映画もラストがとても好き。
苦しみ悩んできたのはあなただけじゃない!犠牲者は私たちなんだから!と爽快に暴れるシーンは気持ちよかった。
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