永遠の寂しんぼ

フラ・フラダンスの永遠の寂しんぼのレビュー・感想・評価

フラ・フラダンス(2021年製作の映画)
4.2
『納得できた心の復興』

この映画は東日本大震災の主な被災地である東北3県を舞台にしたアニメ企画「ずっとおうえん。プロジェクト 2011+10…」の一環で制作された。同プロジェクトのアニメ映画『岬のマヨイガ』は個人的にちょっと引っかかる内容だったが、この『フラ・フラダンス』は主に震災からの復興を描いている面で納得できた部分が多く、良作と感じた。

 この映画は主人公の日羽が福島県いわき市のスパリゾート・ハワイアンズの新人フラダンサーとして同期の仲間たちと成長していくお仕事もの。前半は日羽が同期のダンサー達と息が合わなかったり、不器用さゆえにデビューイベントで大失敗してしまったりと、共感性羞恥を食らうシーンが多く個人的には拷問のようにキツかった。
 しかし、そこまでやっただけに全体として日羽の成長や仲間たちとの絆がしっかり描けていると思った。人前で芸を披露するようなお仕事の厳しさをしっかり描いているのはポイント高い。ハワイアンズだけではなく福島の街並みなんか描かれているので観光PRにも一役買っているのではなかろうか。

それにこの映画で最も素晴らしいと思ったのは日羽の成長を通して震災からの復興を描いている部分。震災で受けたハワイアンズの被害の説明があったり、日羽のお姉さんは(おそらく)震災で亡くなっている描写がある。人気のフラダンサーだったお姉さんの仕事を日羽が引き継いでいく過程で、予告編では伏せられているとあるビックリ要素も出てくるが、終盤のエモい展開にはなんだかんだで感動した。『岬のマヨイガ』に引き続き吉田玲子さんは日常の中に非日常の要素を入れるのにハマってたりするんだろうか?

 微妙だった点は3つ。まず映画一本にしては登場人物が多い為に、色々なキャラの物語を描こうとして話がやや散漫になっていた。ラストもメインの5人とは別のキャラの話題が急に出てきて話がそれてしまった感じある。ここはもう少し整理をつけて欲しかった。
 二つ目は終盤で日羽たちが出たフラダンス大会。僕はフラダンスを生で見たことは一回あったかないか程度なので、あんな感じのダンスがフラダンス扱いされるのかさっぱり分からないが、ちょっとアイドルアニメの影響を受け過ぎな印象があった。
 最後に声優について。おおむね良かったんだけど、ディーン・フジオカの棒読みはもうちょっとどうにかならなかったものか。同じハワイアンズの職員役の山田裕貴が結構上手かっただけに、彼の棒読みが際立っていたのが残念だった。

トータルでは普通におすすめの良作。