逃げるし恥だし役立たず

ヒッチャー ニューマスター版の逃げるし恥だし役立たずのレビュー・感想・評価

4.0
米国シカゴからサンディエゴへと向かう砂漠地帯で車両陸送の仕事中のジム(C・トーマス・ハウエル)がテキサスのハイウェイで一人のヒッチハイカーのジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)を拾った事から、殺人鬼と青年との生死を賭けた恐怖の“鬼ごっこ”が始まる。『ブレードランナー』のルトガー・ハウアーが謎の殺人ヒッチハイカーを怪演し大ヒットを記録したサスペンススリラー。
睡魔に襲われたジム(C・トーマス・ハウエル)が不気味で目的地を告げようとしないジョン・ライダー(ルトガー・ハウアー)を車に乗せた事から始まる悲劇で、真顔で「僕は死にたいと言え」「俺を止めてくれ」とナイフをチラつかせながら意味不明な事を言っては、家族連れであろうが誰彼問わず無差別に殺すから勝手に逃げられない、留置所でもパトカーでも追ってきては殺戮を繰り返すので自首もできない、車を追突させてくるわ、ガソリンスタンドは爆発させるわで其の癖、ジムを殺さずに執拗に付け狙う。出たとこ勝負なサイコパスの反面で、財布を掏摸盗ってナイフを隠し入れたり、レストランではポテトフライに切断した指を混ぜたり、カフェでは銃から銃弾を抜いたり、ヘリコプターを車上から撃ち落としたりと訳が分からない。警察やエスターリッジ警部(ジェフリー・デマン)やウェイトレスのナッシュ(ジェニファー・ジェイソン・リー)を巻き込み、事態は最悪の方向へと転がっていく。
ハイウェイ物の『激突!』にサイコスリラー物の『氷の微笑』を併せた様な作品で、スピーディーな展開とルトガー・ハウアーの表情と各々の人物描写が非常に良く、昼と夜の使い方など秀逸な演出と脚本の発想には只々脱帽である。流石に最後は狙い過ぎて安っぽくなるのだが、前フリがあり何度もしつこく繰り返されて恐怖感を高めながらのイベント発生。まあ何が恐いのかって、何を考えているのかさっぱり分からない人間で、どんな酷い事をしてくるか分からなし、何時まで続くのか、此んな程度じゃ済まないっていう恐怖感の煽り方が上手い。ただ追い続け、ただ追われ続ける事の恐怖から発狂していく主人公にも共感できてしまう。ジョン・ライダーとは何者だったのか、呆れた表情で「役立たず」と告げた意味やラストの帰結する処は何だったのか?と疑問が残る。
瞳の綺麗なルトガー・ハウアーは捨てても戻って来る呪われた日本人形の海外版とも言えなくはないのだが…アメリカの田舎町って映画では好意的に描かれないのは何故なんだろう…