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エスター ファースト・キルのBATIのレビュー・感想・評価

3.2
13年の時を経て前作に続きイザベル・ファーマンが続投。それがエスターという中年女性もある種のマイノリティであることを浮かび上がらせる。中盤までは凡庸だが折り返し地点から「アメリカの保守的な家庭」が見えると景色が変わる。

イザベルの加齢がネガティブにとる評を散見するがそれはルッキズムの極みで、本人続投することによって前作も実際はこうだったのではと思わせるし、何よりも「身体の小さい声変わりしていない女は少女」というルッキズムを前作より可視化させている話になっている。

普通の女性として生きたくもそうは出来ず(きっと忌まわしきペドフィリアにも遭っていただろう)、本人は大人の男性と恋愛をしたくもそれが叶わない。前作ではそれが異常性でしか描かれなかったものが通説なものとなり、逆に一般的な中年の恋愛をできる人間たちへの憎悪になる視点が生まれていた。

エスターが忍び込む家庭の成り立ち、形骸的な家族の肖像それがエスターに匹敵するほど禍々しく怪物であることを描き、また差別的な視点で人間たちがエスターを見るということも描いているのは面白かったです。惜しむらくは前作のようなサスペンススリラーとしての機能はほぼなくなってしまっていることと、ホラー演出も光ってはいないことで、割と人は選ぶ作品になっていると思う。

エスターが逃げるシーンでマイケル・センベロの「マニアック」が流れるんですよね(「フラッシュ・ダンス」!!)。これ流れるところのイケイケっぷりがとても好き。「バケモンにはバケモンぶつけんだよ!」よろしく「正しくない人間に正しくない人間をぶつける」が展開されている作品になってた。
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