あっきー

あの夜、マイアミでのあっきーのレビュー・感想・評価

あの夜、マイアミで(2020年製作の映画)
4.5
60年代アメリカ。キング牧師やマルコムXらを筆頭に、黒人の尊厳を勝ち取るための公民権運動が盛んな頃。マルコムX、カシアス・クレイ(のちのモハメド・アリ)、サム・クック、ジム・ブラウンという各界で活躍する4人がマイアミで共に過ごす一夜を描いた、同名戯曲が原作の映画。

ここでの対話はすべて創作であるが、当時を代表する著名な4名の実在の人物による「同胞たちのために自分の力をどのように役立てるべきか」と白熱していく議論は、公民権運動の在り方や、今なお続く人々の深層心理にまで刻まれた差別意識といった問題を浮き彫りにしていく。

同じ黒人同士であっても公民権運動に対する立場や考え方は異なるというのが本作のユニークなテーマで、黒人の中でも肌の色の薄さによる差別があるというのは、初めて気付かされた。そして、「同胞たちのために」自らの影響力を行使すべきだという意見と、個人として自らの尊厳のために戦いを続けるという信念の、同じ目的を目指しているようで実はすれ違っていくという点の興味深さ。ベースになっている戯曲がもともと優れているのだと思うが、人間ドラマとしての掘り下げ方が見事。

オスカー女優レジーナ・キングが初めて監督業に挑戦。初監督とは思えない、堂々とした作品の仕上がりに驚く。戯曲を原作にした会話劇中心の作品は、映像化するにあたって「なぜわざわざ映像にするのか」というハードルが生じるが、俳優陣から見事な演技を引き出す演出力と、密室での濃厚な人間ドラマを温度感を持ってとらえた映像によって、ハードルを軽々と越えてみせた。

社会的なテーマ性に優れた作品でもあり、著名人4名のぶつかり合いをドラマチックに描く娯楽性も兼ね備えた秀作。
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