すずき

クラッシュ 4K無修正版のすずきのレビュー・感想・評価

クラッシュ 4K無修正版(1996年製作の映画)
3.5
ジェームズとキャサリンの夫妻は、愛し合っているが性的に満足出来ないでいた。
共に公認で浮気をする夫妻だったが、ある日ジェームズは自動車事故を起こして入院する。
事故相手の男は死亡したが、男と同席していた女ヘレンは助かった。
ヘレンは自動車事故に性的興奮を覚える体質。
ジェームズはヘレンと関係を持ち、更に同好の士が集まる自動車事故大好きクラブへと誘われる。
ジェームズはクラブのリーダー、ヴォーンに惹かれていく…

クローネンバーグ監督による、自動車事故フェチ映画。
得意の人体破壊描写や、「ヴィデオドローム」のような機械と肉体の融合のような描写が見られると思いきや、そこら辺は案外抑え目。
ただエロシーンは多くて、エロ×自動車事故(もしくは車そのもの)のテーマとしては、かなり分かりやすい描写なんじゃないでしょーか。
それが理解出来るかは別として。

でも自動車事故フェチってのも、何となくは分かる気がしてしまう。
交通事故は、老いも若きも、男も女も、金持ちも貧乏人も関係なく、運が悪ければ訪れる「平等な不条理」だ。
手足は折れ曲がり、パンパーは凹み、計器盤に顔面を突っ伏して、体はひしゃげた車体に挟まれ一体と化している。
その事故が悲惨であればあるほど、不条理であればあるほど、技術の発展した現代では普段意識されなくなった、「死」と「生(性)」、エロスとタナトスを感じるのだろう。

ラスト、主人公夫婦は長らく感じていなかった、「生」を手に入れる。
だがそれは、死と隣り合わせで得られる危険なもの。
ラストの「次こそはきっと…」という台詞、彼らがどこを目指すのかは具体的には明言されないが、その行き着く先の終着点を考えると恐ろしくも官能的である…なんてね。
つまりは、交通事故起こすと変態に写真撮られてズリネタにされるから、皆も気をつけろよな、って事で。