バリカタ

誰かの花のバリカタのレビュー・感想・評価

誰かの花(2021年製作の映画)
4.0
こういう作品、好きですねー。

当初予定はなかったのですが、評価良かったので鑑賞です。間接的表現や示唆的表現が多くて、登場人物の心情や「本当のところ」をひたすら思いを巡らしながら観てました。楽しかったなぁ。静かなんだけど激しいんです、心情の応酬が。とにかくずーーーーっと心がモワァァァァンしてるんです。晴
れることはありません。これが人間のリアルだよなぁ・・・と。

「誰かの花」

不思議な題名ですが、ストーリーを考えると絶妙な題名です。「ある物」と「人間関係」を中心に生まれる疑念や心情が、見る立場や角度によって変わる様を巧みに見せて人間の業というか・・・本質をぐりっと描いた作品です。ラストでわかる事実をどう受け止めるか?観る人に鋭く突きつけてくれます。人間は多かれ少なかれ他人に何らかの迷惑をかけながら生きていきます。それはそれは脆弱な関係性の上に成り立っていると思います。いつの間にか思いもよらない状況に陥ったり、耐えられない状況に陥ったり、車を運転していれば100%事故を起こさないとは言い切れない。つまりいつかは加害者になる可能性だってある、またその逆も。人間関係だって同じ。ボタンのかけ違いが生む悲しい関係ってありますよね。うまく言えませんが、人間のモワァンとした本質をビシッと描けているんじゃないでしょうか?

また、人間の本質を描くだけでなくサスペンスタッチでストーリーが進んでいくその演出がこれまた巧みです。これは練られてますねーーー。もしかしたら基本的な演出なのかもしれませんが、観客の心をここまでコントロールできるのか?と驚きました。

「落としましたよね?」でドキッ!
「缶コーヒー飲んでました」でドキッ!

計算してるんだよなぁ、性格悪いんじゃぁないかなぁ?監督(笑)

観賞後に監督のアフタートークがあり、本作のテーマをおっしゃってました。「いろいろあるけど
人間は生きていかなくちゃいけない」いやいや、にしても・・・・辛いよなぁ。ワーーーイ!って笑顔満開で生きていきたいけど人間は疑念やら、先入観やら、保身やら、不条理やら、運命やら・・・・とにかく生きていくことは面倒臭いです。基本「辛い」です。まぁ辛いです。すり減るよなぁ生きていくって。けど、背負っていかなくちゃいけないんだよなぁ。でも生きていかなくちゃね。はぁ。リアルな世界にハッピーなエンドなんかないんだよなぁ。

とても楽しめた作品だったのですが間接表現や示唆的シーンが多すぎてちょっと疲れちゃったかな。あと、間接表現の後に直接表現あったりでくどいなぁって思うことも。ちょっと味付けが濃い気がしました。メリハリをつけた方が良いと思いました。
けどスマッシュヒットですよ。