このレビューはネタバレを含みます
笑われるんじゃねえ、笑わせるんだ
芸人としての魂の籠った一言に思わずグッと息を飲んだ。
映画としてのストーリーの出来栄えも十分ながらに、彼、深見千三郎が芸人としての職業を選んだのではなく、芸人としての生き方を選んだのだということが分かる構成に驚いた。
ビデオなどの記録媒体が少なかった1960年代。彼の舞台を残すものはほとんど無いらしいが、その芸人哲学が萩本欽一や、芸能界の巨匠となった北野武を通して、今もなお生きている。
加えてこのキャスティングの素晴らしさにも注目したい。企画会議で深見千三郎役に大泉洋を提案した誰かに一億円をあげたい。大泉洋にこんなにハマる役があったのか、そして深見千三郎という記録がなく、誰かの記憶を通してしか再現出来ない人間を、ここまで見事に演じ切れる役者が大泉洋を除いているだろうか。
まったく見事な映画だった。