おなべ

マ・レイニーのブラックボトムのおなべのレビュー・感想・評価

3.7
◉夢見る青年の胸を切る心の叫び。

◉故《チャドウィック・ボーズマン》の遺作。《オーガスト・ウィルソン》の戯曲を基に製作された本作は第93回アカデミー賞にて2部門受賞した。

◉1927年 アメリカ シカゴを舞台に、白人が経営する音楽スタジオで録音の為に集まった“ブルースの母”と呼ばれる〈マ・レイニー〉とそのバンドメンバー達。各々の想いがぶつかり合う内に、胸に秘めたる心内を曝け出してゆく…。

◉《チャドウィック・ボーズマン》はガンとの闘病中、それも晩年に撮影に臨み、若手のトランペット奏者 レヴィーを演じきったそう。

◉序盤から中盤にかけては心地良い音楽とライトなユーモア、それに当時の黒人における社会的立場に触れたちょっとしたイザコザが織り成す会話劇を何となく楽しんでいたけど、終盤にかけてガラリと雰囲気が変わりシリアスな展開に。

◉それぞれが抱える葛藤において、やはり黒人と白人の人種間の問題は、昔も今も変わらず複雑に絡み合っているという事を強く感じた。また、黒人の中でも年配と若手の考え方は全く異なり、経験による“生き方(世の渡り方)”の違いが鮮明に描かれていたのが印象的だった。

◉バンドメンバーの中にも、マ・レイニーも、スタジオの録音技師にも、誰も悪者はいないのに、各々のやり場の無い憤怒がひしめき合っている状況に、ただただ胸が痛んだ…。
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