TakahisaHarada

くれなずめのTakahisaHaradaのレビュー・感想・評価

くれなずめ(2021年製作の映画)
3.8
5年前の友人の死を引きずっている男5人組の啓発が描かれる作品。序盤から既に死んでいることが示唆されている吉尾がなかなか成仏できず現世にしがみついてる話なのかなと思いきや、未練を断ち切れていないのは5人の方(ミキエも?)という展開が良かった。
「友人の死をどう受け入れるか」という深淵なテーマを扱いながら、置きにいった結論に留まることなく「ヘラヘラしろよ」「はっきりさせようとすんな、引きずることから逃げるな」という、この作品ならではの答えみたいなものが提示されてるところがとても好きだった。その答えが「くれなずめ」というタイトル、ラストシーンの描写に繋がってるところもすごく良い。

死んでいるはずの吉尾が実体をもって存在している描写、高校時代から少しずつ遡って見せていく展開から、勝手にファンタジックな想像(死後のある日吉尾が突然現れる…みたいな)をしながら、何が起きるんだろうとそわそわした気持ちで観ていた(序盤のカラオケの段階では同級生じゃないみたいだしこの6人どういう関係なんだ?という不思議もある)。なのでそもそもあの吉尾は5人にとってはまだ存在しているも同じ、そのことの表現に過ぎない、というのはわりと肩透かし感があった。
ただ、終盤にその感覚も霞むぐらいのぶっ飛んだ描写があって笑った。心臓、ガルーダ、アメイジング・グレイス、お花畑とか、ドラッグ描写か?って感じだったし、存在しない吉尾を映している演出上の嘘はあるけどあのシーンまでおふざけ感はなかったので落差がすごい。松居監督自身を投影した欽一が作品の核心に近いことを言うシーンの直後にあの演出なので、照れ隠しのようにも思えた笑

元々演劇だったと言われないと分からないほど台詞に作り物っぽさがなくて、6人が本当に旧友っぽく見えるところは好きだった。通夜の鼻の綿、火葬後の骨とか不謹慎なやつが一番笑えるとか、吉尾と欽一みたいに一対一になるとシリアスな話もしたりするところとかリアルだな~と思った。公園でのミキエとのシーンで、ミキエが戻ってきたときの5人の反応も笑った。
最後の最後まで引っ張った余興のシーンはウルフルズの曲含めすごく良かったし、全く違う意味になる2回目の見送りシーンも良くて、この2つのシーンが特に印象に残ってる。
冒頭の結婚式場での長回しシーンは松居監督曰く「演劇と映画の狭間を生む」(映画でありながら「観る人が観たい場所を決められる」演劇の特徴も同居させる)ことを意図したものだったらしい。