かえるのエリー

TOVE/トーベのかえるのエリーのレビュー・感想・評価

TOVE/トーベ(2020年製作の映画)
3.6
タイトルを見た時、ムーミンの作者かなとは思った。ただムーミンもアニメで観た程度、作者の素顔などは知るはずもなく、であれば前情報を入れずに観てみよう、と。

同じフィンランド映画「ファブリックの女王」にマリメッコ誕生を期待すると肩透かしを食らうように、本作にもムーミンの誕生を求めてしまうと、同様、またはそれ以上の仕打ちを喰らうので要注意。



以下ネタバレ感想



そう、これは愛と芸術への葛藤の話だった。偉大なる芸術家の父にイラストなんてと詰られるトーベ。本人もその呪縛にかかっているため、他人がそのイラストに光るものを見出しても、素直に聞き入れられない。どうせお金のためだ、と。
不倫関係のアトスが新聞に、同性愛相手のヴィヴィカが舞台に。それによってムーミンが世界に広がったのかと思うと、彼らの功績は大きい。トーベだけを愛してくれるアトスではなく、誰のことも愛するヴィヴィカを求めてしまうのはヤキモキしたが、所詮愛ってそんなものか。特に芸術肌のトーベには理屈じゃないのだ。

上記から割と打算的にムーミンが生まれた中盤までは、鑑賞前のムーミン誕生を期待する気持ちがだいぶ萎えたが、亡くなった父から託された冊子が、トーベだけでなく私の心も救ってくれた。そこには不器用な父の愛があった。

北欧テイストの衣装がどれも素敵で可愛かった。