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トキワ荘の青春 デジタルリマスター版のgcpのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

史実にもとづくフィクション、ということでつげ義春以外マトモに読んだことがないわたしにはどこまで忠実に描かれているのかわからない。けれど、手塚治虫に天津丼おごってもらったり、徒党を組んで記念写真を撮ったり、キャベツと玉ねぎをつまみで食卓を囲んだり、廊下を雑巾掛けしたり、書留を待ち望んだり、野球をしたり、相撲をとったり。静かに切磋琢磨してゆく漫画家たちの日常が愛おしい。その中でも、桃井かおり母さんの「漫画家は不良じゃない、好きなものを見つけられて、ほとけさまに感謝しなくちゃ」だとか、古田新太の「それが辞められないんですわ」だとか、ずっしり、じんわり残る言葉が印象的。復興の歌から歌謡曲、ジャズまで音楽が変わっていくように高度経済成長期で古き良きものと今の新しいものが入れ替わる時代。若手漫画の新しい住人たちが適応していく中、ひとり取り残されていく主人公〝いい人”テラさん。「いい人すぎる」「テラさんは自分がいちばん」成功を収める仲間、後輩を見ても自分の信念は揺らがない。機械に取って代わる伝統芸能の職人を想わせるが、苦悩してもやさしさはそのまま凛としているもっくんが良かった。哀しいけれど、輝かしい青春は続かないのだ。「そろそろ決めなきゃいけない時だったよね...」セリフを羅列するレビューなんていけないけれど、2時間で描かれる時の流れを頭の中で巡らせては寂しいような温かい気持ちになっている。
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